榊原記念病院院長の磯部光章医師
撮影/上田泰世(写真映像部)
榊原記念病院院長の磯部光章医師撮影/上田泰世(写真映像部)
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榊原記念病院(東京都府中市)は、心臓疾患診療における全国屈指の病院で、手術数では成人と小児を合わせると全国トップクラスを誇る。その院長に2017年に着任したのが、東京医科歯科大学医学部循環器内科教授だった磯部光章医師だ。本人いわく「経営は全くの素人」。同院は就任前から厳しい経営状況が続いており、就任2年目の18年度には収支が赤字に転落してしまったものの、経営改革によりV字回復し、21年度から2年続けて開院後過去最高収益を果たした。いかにして改革をおこなったのか。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院』編集チームが、磯部医師に取材した。前編・後編の2回に分けてお届けする。

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 榊原記念病院は1977年に設立された病院で、設立者は心臓外科のパイオニアの一人である元東京女子医科大学教授の故・榊原仟医師だ。2003年に、東京都渋谷区代々木から府中市へ移転してきた。心臓疾患診療をリードする病院だが、地元密着の地域医療にも尽力する病院として知られる。22年「Newsweek」誌の国際病院ランキングで循環器内科・心臓外科ともに紹介されている国際的評価も高い病院だ。

 そんな榊原記念病院の院長への打診が磯部医師のもとに届いたのが、東京医科歯科大学医学部循環器内科教授を定年退官する2年前の16年のことだったという。磯部医師は、循環器分野でも心臓移植や動脈硬化の世界的な研究者として知られ、教室のリーダーとして後進の教育に辣腕(らつわん)をふるい、100人以上の医師を医学博士にしてきた。臨床医としても活躍し続け、難病の血管炎の診療では国際的に知られている存在だ。12年~16年には日本心不全学会理事長を務めるなどし、国民向けに疾患啓発に取り組んできた。しかし、病院経営自体は未経験だった。磯部医師は、院長就任当初をこう振り返る。

「経営については全くの素人、経営のイロハも知りませんでした。ですから、オン・ザ・ジョブ・トレーニングをしながら試行錯誤を続けてきたというのが本音のところです。就任した翌年に赤字になってしまい、何をしたらいいかもわからない状況でした」

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