平田雅彦院長
平田雅彦院長

 手術以外には、投薬のほか、患部にレーザーを当てたり、「ジオン」と呼ばれる薬剤を注射したりして痔を小さくする方法がある。だがジオン注射は、注射液に含まれるアルミニウムの脳に対する安全性が確立されておらず、欧米では認可されていない。また、手術や薬、レーザーでいったんは痔を治しても、痔を引き起こす生活習慣を続けていれば再発の可能性がある。

 そこで、平田肛門科医院では、「食物繊維の豊富な食事をとる」「こまめに運動して体を温める」「肛門に負担をかけない排便法を身につける」などの生活指導に力を入れている。ほかの病院で手術を勧められた患者が転院してくるケースも少なくないが、実際、生活習慣を改めることで9割の患者が痔を克服しているという。平田院長はこう話す。

「当院で1000人の患者さんにアンケートをしたところ、痔と自覚してから受診するまでの期間は、平均7年。ここまで時間がかかっている要因の一つが、手術への恐怖でした。でも治療が遅れることで、痔が悪化して手術せざるを得なくなったり、痔だと思っていたら直腸がんが潜んでいたりする危険があります。肛門の出血や痛みが1週間以上続く、または月に何度も起きる場合は、早めに病院に行ってください。もし医師から『すぐに手術しましょう』と言われたら、きちんと理由を聞きましょう。私が担当した患者さんで、この5年間で緊急手術が必要だった方は一人もいません。その医師に書いてもらった診断書を持って、ほかの専門医にセカンドオピニオンを求めるのも手です」

 医師の言葉どおり急いで痔の手術をした結果、激しい後悔を抱えている人物が、AERA dot.編集部にいる。57歳の男性記者Aさんは、まだ20代半ばだったある日、肛門にブドウの粒のような小さなできものがあることに気づいた。軽度のいぼ痔だった。そこで、過去に盲腸の手術でお世話になった病院に痔の名医がいたことを思い出し、迷わず受診。それが運の尽きだった。

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「俺の肛門を返してくれよ!」