全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2023年7月10日号には日本ミシュランタイヤ B2B事業部 建設・産業機械担当 シニアアカウントマネージャー 金田明雄さんが登場した。
* * *
直径4メートルにもなる建設機械用のタイヤ。その点検をするスペシャリストだ。
鉱山や港湾、採石場などの過酷な現場に出向く。作業現場から車両や機械が戻ってくるのは昼休みのみ。限られた時間の中、目視と計測器を使い、徹底した点検で事故を未然に防ぐ。
点検のポイントは、タイヤの磨耗状態、空気圧、外傷の有無など。側面に膨らみがあると、何かしらのトラブルが起きているという。
積み荷の重さによってタイヤの空気圧も前と後ろで変わる。これらの課題改善の管理も、高い安全性につながる。
人命を守ることはもちろんのこと、車両や機械が故障して工事が中断すると、1日で巨額の損失が出てしまう。
点検を通じ、顧客の事業の生産性拡大やコスト削減、安全性向上をサポートする。
学生時代、スポーツカーを乗り回していた。お金をためて、タイヤを変えると、乗り心地が良くなった。この時、地面に触れる唯一の部品であるタイヤの重要性に気付き、それに携わる仕事をしたいと思った。入社後、本社のあるフランスでの研修で、ミシュランの博物館に展示されていた大型タイヤに魅了され、異動を希望した。
常に心がけていることは、現場で顧客のニーズや課題を把握し、最適なソリューションを提供すること。
顧客の多くがドライバーの定着率を高めたいと思っており、金田さんはタイヤの販売だけでなく、点検を効率良くできるツールの提供、労務の相談まで、包括的に提案する。いわばタイヤのコンサルティングである。
「トラブルで夜中に呼び出されることがなくなった」「タイヤの交換頻度が減った」などの声を聞くとうれしく、やりがいを感じる。
売り上げのみならず、タイヤ点検回数やコストリポート提出数などが総合的に評価され、年間を通じて最もプロフェッショナルな仕事をした営業担当に贈られる「エリート5」の大型タイヤ部門で2年連続1位となり、フランス本社で表彰された。
業務で得た知見は、タイヤの開発にも生かされる。2050年までに廃タイヤを熱処理して新しい製品をつくること、素材を全て再生可能やリサイクル材料にしてサステイナブルに貢献することを目指している。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2023年7月10日号