これらの中で、日本人が就きたがらない職についての問いは意見が分かれている。外国人労働者への日本人の配慮がうかがわれるが、筆者は日本人が就きたがらない職に外国人が就くことは問題がないと考える。重要なのはそこから本人の努力次第で賃金が上がり、あるいはさらに良い職へと転職ができて、社会の階段を上がれる可能性があるかどうかだろう。もし、一生、その仕事で固定されるようなことであれば、そもそも優秀な人材からはそっぽを向かれ、他の国で受入れてもらえないような人ばかりが日本に集まってしまうことになる。今の状況こそがその可能性が高い。
では最近の調査結果はどうだろうか?
比較的新しいアンケート調査にNHK世論調査部による2020年3月の全国電話調査がある。「外国人増加への期待と不安」とのタイトルが付けられている。
この調査結果では、日本で働く外国人が増えることについては、賛成が26%、どちらかといえば賛成が44%で合計70%と多数を占める結果となった。反対派では、どちらかといえば反対が17%、反対は7%の結果となった。
この結果を見れば、過去から外国人の受入れを肯定する意見は変わっていないと言える。
その一方、この調査では、自分の住む地域に外国人が増えることに賛成する人は57%にとどまる。つまり、日本にとって外国人が増えることは必要であり賛成するが、自分の身近で増えることに対して尻込みする姿勢が見てとれる。
自分の住む地域に外国人が増えることへの不安として挙げられていることに、「言葉や文化の違いでトラブルになる」と「治安が悪化する」を挙げた人が多い。一方、外国人が増えることへの期待では、「新しい考えや文化がもたらされる」が最も多い。
言葉や文化の違いでのトラブルを心配する声は2004年の調査で、外国人労働者に求めるものへの回答が日本語能力と日本文化に対する理解とあったことと符合する。ここでもまた過去から同じ課題がそのまま引き継がれている。
新聞社による世論調査として、読売新聞は2019年3~4月にアンケート調査を実施した(「外国人材」世論調査、郵送方式)。外国人労働者の受入れ拡大についての問いでは、賛成が57%で反対の40%を上回った。
ここでも外国人受入れについての肯定的な意見が大多数を占めている。
●毛受敏浩(めんじゅ・としひろ)
1954年徳島県生まれ。慶應義塾大学法学部卒、米エバグリーン州立大学公共政策大学院修士。兵庫県庁に入職後、日本国際交流センターに勤務し、現在、執行理事。文化庁文化審議会委員。著書に『人口激減─移民は日本に必要である』(新潮新書)、『自治体がひらく日本の移民政策』(明石書店)、『限界国家─人口減少で日本が迫られる最終選択』(朝日新書)など。