男性は、一般的に20代より30代、30代より40代と、年齢が上がるほど高血圧が増加します。一方、女性の高血圧は20~40代では少ない傾向があり、これは女性ホルモンに高血圧を抑制する働きがあるため。しかし、閉経を機に女性の高血圧も増え始めます。
「女性は60代以降で高血圧になる人がグンと増え、70代以降では男性とほぼ同数か、女性のほうが多くなるという逆転現象が起こります」(野出医師)
現在、日本の高血圧患者は約4000万人を超えると言われますが、「昔はもっと割合が多かった」と話すのは、筑波大学医学医療系社会健康医学教授の山岸良匡医師。山岸医師は、高血圧などの生活習慣病に関する疫学研究や予防医学を専門としており、厚生労働省の一般向け健康情報サイト「e-ヘルスネット」で生活習慣病に関する記事を作成するなど、啓発にも積極的に取り組んでいます。
■患者数が減少している現在でも、65歳以上の3人に2人は高血圧
「日本人は米が主食の民族なので、おかずとして塩気の強いものを食べる習慣がありました。また、冷蔵や流通の技術がなかった時代には、『塩蔵』という、塩で食品を貯蔵する保存法がとられる地域も多く、もともと塩分過多で高血圧になりやすい食文化だったといえます」(山岸医師)
産業の発達に伴う食事や生活の変化、塩分摂取に関する啓発などにより、ここ数十年で高血圧の患者数は減少していますが、それでも20歳以上では「2人に1人」、65歳以上では「3人に2人」という、決して人ごとではない病気です。
高血圧は、医学的には「高血圧症」といい、「本態性高血圧」と「二次性高血圧」に分けられます。本態性高血圧は、とくに原因となる病気がなく起こる高血圧で、日本人の高血圧のほとんどがこのタイプです。一方、二次性高血圧は、副腎や甲状腺、腎臓の病気、薬の影響などが原因で起こるものをいいます。
日本高血圧学会による基準では、病院で測った場合(診察室血圧)に最高血圧が140mmHg以上、かつ/または最低血圧が90mmHg以上で高血圧と診断されます。また、高血圧は程度によりI度からIII度に分類されます(表参照)。この分類と、患者の年齢、持病やリスク要因の有無などにより、治療を始めるタイミングや治療目標を検討します。