濱野さんが少し大きな声でそう呼びかけると、ホームレスの男性2~3人が近くにきた。濱野さんは、離れた場所にいるホームレスに「どうですか? おむすび食べませんか」と声をかけにいき、その間に他のメンバーは、ポリタンクの水とせっけんで手洗い後、アルコール消毒をした上で使い捨てのビニール手袋をはめた。炊飯器のふたを開け、炊きたての白米を手に載せると、その場で握り始めた。
提供するのはおむすびや缶詰だけではない。みそ汁や総菜もある。メニューは毎回異なり、この日は玄米粉のおこのみ焼き、切り干し大根に高野豆腐だった。
「最近は元気にしていますか? 困ったことはありませんか?」とホームレスに話しかける濱野さん。
60代男性は「今後もここで寝泊まりする予定。もうネットカフェとかに入るお金もなくて」と不安を口にした。先日、生活保護費が打ち切られてしまい、さらに日々の生活がキツくなっているという。
「わかりました。何かしら手立てを考えるから。また来るんで。その間は気持ちを強く持って! 変なこととかはしないでね」と濱野さんが声をかけると、男性は「あぁ、はい」と力なくうなずいた。
濱野さんは、ただおむすびを配るだけではなく、コミュニケーションを取ることも強く意識しているという。
「おむすびを配っている様子を見ているだけで、もらいにこない人もいるので、こちらから行って渡すこともします。困っていることを抱えてしまう人も多いので、こちらから話しかけて寄り添えることができれば、打ち明けてくれるかもしれないので」
濱野さんがこうした活動を始めるきっかけはなんだったのか。なぜホームレス支援なのか――。
2021年10月。濱野さんは選挙の手伝いで、夜中に川崎駅前で演説の場所取りをしていたという。そのとき、60代のホームレスの女性が急に倒れ、泣き出した。濱野さんは「“やばい人”が泣いている」と思い、ただ見ているだけだった。