NPO団体「CoE(こえ)」の運営者、濱野怜さん
NPO団体「CoE(こえ)」の運営者、濱野怜さん
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 川崎市に毎週木曜日、リヤカーを引いてホームレスに炊き立ての白米で作ったおむすびを配る団体がある。運営者は大学院生ら若者が中心。台風が来ても、大雪が降っても、無休で毎週同じように配り続ける。彼らの活動を知り、ボランティアで参加する人たちもいる。筆者とそれほど変わらない年代の彼らが、なぜこの活動を続けるのか知りたくて、活動に密着した。

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 木曜日午後7時、JR川崎駅前東口。小雨が降るなか、傘を片手に帰路に就くサラリーマンや、飲み屋街へ向かう若者ら多くの人が行き交っていた。

 この東口のロータリーに毎週木曜、大学生をはじめとする若者が数人、リヤカーとともに集まる。この日は5人。彼らはNPO団体「CoE(こえ)」のメンバーや、ボランティアの協力者たち。ホームレスに、おむすびを配るなどの活動を始めて約1年半経つという。

 リヤカーにはポータブルバッテリーにつながれた炊飯器のほか、のりや調味料、アルコール消毒スプレーなどが積まれている。炊飯器には、近くにある事務所で炊いた状態の白米が入っている。

20人分以上の材料などを積んだリヤカー
20人分以上の材料などを積んだリヤカー

「イワシの煮付けとパイナップルのフルーツ缶詰が2種類あるので、1人に1個ずつ選んでもらって渡していきましょう」

 CoEの運営者を務めている慶応義塾大学法科大学院法務研究科1年の濱野怜さん(22)がそう声をかけ、重さが35キロ以上あるリヤカーを引き始め、移動した。ぬれないようにリヤカーにはブルーシートをかぶせ、メンバーらの多くはじゃまになる傘はささずに歩いた。

 約15分で駅から約1キロ離れた川崎市教育文化会館に到着した。ここまで来ると繁華街とは雰囲気が一変する。この施設のほか、すぐ近くには裁判所や税務署がある。普段、昼間は利用者で人も多いが夜は逆に人がいなくなり、雨風をしのぐために、屋根の下にホームレスが数人集まっているという。

「今日のおむすびは、ホウレン草と豚バラ肉を炒めたものを混ぜました。三角おむすびレシピコンテストで入賞したレシピで、健康に良くおいしいですよ」

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