すると、男性のホームレスが女性にハンカチを手渡し、なぐさめていた。その男性は濱野さんに、

「目の前で困っている人を助けないのはなぜか。社会を変えると言っておきながら、そんなんでは変えられない」

 と言い放ったという。

 将来、政治家を目指していた濱野さんだが、「困っている人を無意識に排除していたことに気づいた」という。

 その選挙期間中、倒れたその女性に毎日話しかけていたら、自然に打ち解けた。女性があのときに倒れたのは、いろいろ物騒な出来事が多く、夜は怖くて眠らずに立っていたが、とうとう倒れてしまったという。

 このときの経験から濱野さんは、政治家を目指すのであれば、目の前の困っている人に手を差し伸べるべきだと考え、ホームレスへの支援を決めた。

 おむすびにしたのは、親しみ慣れた食べものというのが大きな理由だが、「『おにぎり』ではなく『おむすび』とすることで、自分たちとホームレスの人たちとの縁結びといった意味合いを込めました」。

 文化会館でひととおり、おむすびと総菜を配り終えると、次は近くにある稲毛公園に向かった。途中、大きな通りを渡る際、信号や横断歩道がなく、歩道橋を渡らなければならない。毎回、みんなでリヤカーを運んで渡るのだという。

リアカーを引きながら歩道橋を渡るメンバーら
リアカーを引きながら歩道橋を渡るメンバーら

 稲毛公園は、川崎駅東口から真っすぐ延びる大通りと国道15号との交差点に面しており、近くはマンションなどが建つ住宅街にある。神社や大きな広場があり、かなり大きな公園だ。到着すると、ホームレスの男性が5人ほど集まってきた。

 ここでも1カ所目と同じように、濱野さんが周辺のホームレスに声をかけ、ほかのメンバーらは、歩道橋の踊り場の下で準備を始めた。

●活動を通して「ホームレスへの偏見がなくなった」

 おむすびと一緒に配られる総菜。これを毎週、半日かけて作る女性がいる。CoEの活動に参加して9カ月目だという。

「生まれも育ちも川崎で。小さい頃はホームレスって、ちょっと怖い印象があったから近づかなかった。これまでボランティア経験がなくて、こういった活動に参加するのはこの団体が初めて。ある日、新聞を見て『近所だ!』と思って、参加してみようと思いました」

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2種類の総菜を20人分以上