濱野さんはこの状況について、自身の考えを語った。
「計画的に考えられずに、生活に苦しむ人も多い。なかには生活保護の受取日を忘れてしまい、保護を打ち切られた人もいます。人数が足りないのはわかっているが、行政も積極的にホームレスの実態把握や生活保護などの相談をしてもいいのではないか。駅前のベンチに手すりなどつけて、寝られなくして排除するより、もっと良い解決策があるはず」
川崎市が4月に公表した調査によると、市内のホームレスは132人となり、前年比で29人減った。2019年の285人から半数以下になっている。調査対象は公園、河川、道路、駅舎などで、2日間に分けて目視調査を実施。市保健福祉局の担当者は「2019年から4年間、第4期川崎市ホームレス自立支援実施計画に基づいて巡回相談をし、自立支援センターへの入所なども案内しました。その結果の数字では」と話した。
ただ、濱野さんはこう指摘する。
「私がこれまでつながりを築いてきた“オジさん”たちのうち、10人は路上で亡くなっています。そのため、市が確認した『29人の減少』のうち3分の1は市の取り組みの成果ではないです。路上で対等な関係性を築いてきた私たちが、彼らに寄り添った解決策を提案していきたいです」
CoEは、おむすびの配布以外にホームレスの相談に乗ることも業務としている。生活保護の案内や打ち切りにあった人については、話を聞いた上で行政に対して再開を検討してもらうよう働きかけることもあるという。
濱野さんによると、今はホームレスを言葉巧みにだましてどこかに連れていき、生活保護費を搾取する「生活保護ビジネス」が川崎では横行しているという。目をつけている業者が二つほどあり、不審な人物にホームレスが囲い込まれていないか、時間があれば巡回しているという。
濱野さんに将来について聞いてみた。
すると、いまも政治家を目指していて、「格差をなくし、誰もが対等な関係を築きける社会にしたい」という。ホームレスの居場所を作りたいといい、彼らとコーヒーショップを開くことも検討しているとのこと。
「人生の苦みを味わった元ホームレスが提供する“教訓ブラックコーヒー”」
これをメニューの一つに入れたいという。
(AERA dot.編集部・板垣聡旨)