岐阜市の陸上自衛隊「日野基本射撃場」で自衛官候補生の男(18)が実弾射撃訓練中に3人の自衛隊員に向けて発砲し、2人が死亡、1人が重傷を負った事件は、6月21日で発生から1週間となる。関係者によると、男は「自衛隊オタク」と呼ばれるほど装備や訓練などについて詳しく、高校生の時から自衛隊に入りたがっていたという。一方、発生当時の現場の状況などもわかってきた。
死亡したのは、名古屋市の守山駐屯地に所属する第35普通科連隊の菊松安親1等陸曹(52)と八代航佑3等陸曹(25)。原悠介3等陸曹(25)が左足の太ももを撃たれて大けがをしたという。
今春、自衛官候補生となった男は、地元の岐阜県出身で高校を卒業した直後に志願して、自衛官候補生となった。
自衛隊のホームページによれば、
<自衛官候補生として所要の教育を経て3カ月後に2等陸・海・空士(任期制自衛官)に任官します>
とあり、男はちょうど教育を受けている最中だった。
自衛隊の記者会見などから、使用された自動小銃は、89式5・56ミリで、男はこの日が、5回目の訓練だった。
実弾射撃は、訓練場に入ると準備線という位置で銃の整備、点検などを行う。その後、待機線で待ち、合図が出ると射撃位置に入って発砲するという。
守山駐屯地に所属した経験があり、事件のあった射撃場でも訓練を受けたことがある元陸上自衛隊員だったAさんは、「今回の事件を聞いて、どうしても理解できないことがある」と話し、こう続ける。
「射撃位置に入ってはじめて実弾を渡され、装てんします。しかし、男は射撃位置にいないのに、実弾を入れて発砲し、殺害に至っている。訓練は厳格で、すべてが上官の合図に従って行われます。こんなことはあり得ないです」
発生時の状況について、捜査関係者がこう語る。
「男は、準備線付近で実弾をこめていた。それを上官らが気がついて声を上げた。それと同時くらいに男も『動くな』と大声を出して、そのまま続けて発砲したようです。自動小銃ですが連射はできず、1発ずつ合計4発を撃っています。1発目が死亡した3曹に当たって、すぐに1曹に近づいて2発目を命中させた。そして、3発目が大けがをした3曹の足に当たった。最後は、1曹にさらに近づき、とどめとばかりに発砲。いきなりのことで、何が起こったのかわからず、すぐに制止できなかったと聞いています」