その銃の威力について、先のAさんは、
「使用された自動小銃、89式5・56ミリというのは、拳銃でいえば22口径にあたります。しかし、拳銃とはまったく違い、自動小銃は戦場で使うものなので、威力がすさまじい。NATO(北大西洋条約機構)軍が同様のものを使用しています。3人とも防弾チョッキを着用していなかったと報道されていましたが、着ていたとしてもまったく用をなさないほどの威力です」
と説明する。そして、男を取り押さえたときの状況について、
「事件直後、現場の隊員が男に飛び掛かり、外に引きずり出して銃をとりあげたと聞きました。その際にも男は2、3発発射したようで、すごい執念です」
と語った。
Aさんによると、候補生の男は、小さいころから自衛隊にあこがれがあったようで、同僚らから「オタク」と言われるほど装備や訓練などについても詳しく、自分の考えを主張していたようだ。
「戦車や戦闘機、艦隊から自動小銃など、自衛隊の装備にはめっぽう詳しく、休憩時間にもよく自動小銃などの解説を同僚に披露していたそうです。射撃以外の訓練にも熱心に取り組んでいたようですが、自分の考えに合わないと、『オレならこうやる』『こういうやり方はおかしい』などと文句を言うことがありました。そういうのが原因なのか、自衛隊の集団生活にはちょっとなじみにくいところがあったようです。事件の日は、菊松1曹と衝突してかなり注意を受けたそうです」
陸自の警務隊は6月19日、殺人容疑で送検された自衛官候補生の男の岐阜県内の実家を家宅捜索した。男の実家の近くには高速道路が走り、周囲は田畑が広がる。
男は幼少のころから両親やきょうだいとこの実家で過ごしていたという。
「子どものころはよく近くで遊んでいて、元気なお子さんでした。自衛隊でこんな事件を起こしたと聞いて驚くばかりです」
と近所の人は言う。
また、男の通っていた高校時代の同級生は、
「当時から自衛隊に詳しかったです。『あの銃はこうなっている』とか、よく知識を自慢していました。戦車とか戦争の話になると止まらなくなり、知らない人からみればちょっと“変なやつ”と思われるくらいでしょうね。高校3年の時には自衛隊に入りたいと見学にも行っていたので、それがかなったのになぜこんな事件を起こしたのか」
と話した。