■男子への接種を支援する自治体も

 徐々にHPVワクチン接種の有効性が報告されているが、その恩恵にあずかるためには多くの人が接種することが重要になる。
では、各国の接種の状況はどうなっているのだろうか。以下の図をご覧いただきたい。

各国のHPVワクチン接種状況。折舘医師の資料を基に編集部で作成(2022年8月時点)
各国のHPVワクチン接種状況。折舘医師の資料を基に編集部で作成(2022年8月時点)

 これはオーストラリア、アメリカ、カナダなど、7カ国の接種率を示したものだ。接種率が高いのは、イギリス(女性82.8%、男性77.5%)やオーストラリア(女性81.8%、男性78.8%)。対して日本は女性が7.1%にとどまっているうえ、男性の報告はない。

 接種率が高いオーストラリアやカナダ、イギリスなどの国の特徴は、学校接種が実施されている点だ。折舘医師によると、フランスでも試験的に導入する見込みだという。

 日本では、一時期、副反応の問題で積極的な接種の差し控えが起こった。ほかの国ではそれがなかったことも接種率が高い要因の一つなのだろうが、折舘医師は、やはり接種率を高めるには学校接種が望まれると考える。

「保護者が一回一回、子どもを病院に連れて行って接種させるなど、個々の医療機関が対応するのには限界があります。学校で打ってくれるのであれば保護者も本人も楽です」

 何より国がもっと積極的に女性だけでなく男性にも接種勧奨を行うことはできないのだろうか。これについて折舘医師は、「そういった意気込みは感じられません。及び腰の態度に僕は見えます」と憤る。

 そんななか明るい兆しが見えるのは、HPVワクチンの男性接種の補助について対応する自治体が出てきているという点だ。

 編集部がホームページなどで確認した範囲では、現在は青森県平川市、千葉県いすみ市、山形県南陽市、群馬県桐生市などが男性のワクチン接種費用を助成している。また、東京都中野区や埼玉県谷市などでも開始される予定だ。田中医師は言う。

「こういう自治体があるのは本当にありがたい。まだ実施していない自治体も、ぜひ多くの人が男性接種を望んでいるという実態を知って、前向きに考えてほしい」

(フリーライター・佐藤えり香)

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