マーガレットこどもクリニック院長の田中純子医師(写真提供・同クリニック)
マーガレットこどもクリニック院長の田中純子医師(写真提供・同クリニック)

「ワクチンは2~3回の接種が必要なため、男の子がたくさんいる家庭だと負担は相当なものになります。そもそも、接種が推奨される時期の子どもにはとにかくお金がかかります。将来のために何万円も出せるような家庭は一定数しかいないと思います」

 保護者からは公的な費用負担を望む声が多く、2月にフローレンスが実施したアンケートでは7割が「自己負担がハードルと感じる」と答えた。

 そしてもう一つは、HPVワクチン接種を前向きにとらえ、男性も接種したほうがいいと考える人たちが予想以上にいたことだ。

 田中医師らは今回のキャンペーンにあたって、HPVワクチンに対するネガティブな意見が多く寄せられるのではないか、と危惧していたという。

「ところが、そういう意見は一件もありませんでした。実はサイレントに賛成している、接種を望んでいる方がかなりいるのではないかと、今は受け止めています」

 田中医師も2人の男の子の母親だ。また自身の母親が子宮頸がんをわずらい、現在はサバイバーとして日々の生活を送っている。治療の苦しさや、合併症に悩まされる様子を見ているからこそ思うことがある。

「母が若かった時代にはHPVワクチンはなかったので防ぎようがないけれど、もし接種できていたら違っていたかもしれないって思いが自分の中にはあって……。自分の子どもたち、あるいはそのパートナーが同じ思いをするのは、絶対に避けたいのです」

■ワクチンは男性にも「効果」

 そもそもHPVワクチンを、なぜ男性に接種する必要があるのか。一つにはHPVワクチンが、男性のがんも予防する効果が期待されるからだ。

 HPVはDNAの配列の違いによって200種類ほどある、ありふれたウイルスだ。そのうちの何種類かが病気をもたらし、さらにその中の15種類が悪性の病気の原因となる。

 HPVは主に性的接触により感染を広げるが、HPV感染が原因となるがんは子宮頸がん以外にも外陰がんや肛門がんがあり、中咽頭がん、陰茎がんなど男性も発症するものもある。このほかに性器などにできるイボの一種、尖圭コンジローマもHPV感染で発症する。

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ワクチン接種でがんを「撲滅」