横浜市立大学医学部の折舘伸彦教授(写真・本人提供)
横浜市立大学医学部の折舘伸彦教授(写真・本人提供)

 横浜市立大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授の折舘伸彦医師は「子宮頸がんの場合はほぼ100%がウイルス関連であると考えられています。一方、中咽頭がんは日本では50~60%が関連しているとされています」と話す。

 また、中咽頭がんは感染してからかなり長い時間を経てがんになるため、その因果関係についてはまだ明らかになっていないものの、口腔内へのHPV感染がHPVワクチンの接種によって下がったというデータがアメリカなどから出てきているという。

 そして、男性がワクチン接種することで、女性のHPV感染を防ぎ、子宮頸がんを大きく減らせる可能性がある。

 HPVの持続感染が子宮頸がんをもたらすとわかったのは1983年。ドイツの医学者が発見し、2008年にノーベル医学生理学賞を受賞した。ワクチンが開発されて接種が始まったのはアメリカが最も早く、2006年からだ。

 現在、使われているワクチンは、2種類のウイルスに対応している2価ワクチンのサーバリックス、4価ワクチンのガーダシル、9価ワクチンのシルガード9の3種類。サーバリックスとガーダシルなら約70%、シルガード9なら約90%の子宮頸がんを予防できる。

 日本では今年4月に女性の定期接種でシルガード9の使用が認められた。一方、男性には4価のみ承認されているだけで、繰り返すが接種は自費になる。

 ワクチンの効果だが、子宮頸がんについては多くの報告がある。その一つ、スウェーデンの研究者が2020年に報告したものによると、17歳までに4価のワクチンを接種した女性は、接種しなかった女性に比べて子宮頸がんリスクが88%減ったことが明らかになった。翌年にはイギリスからも、12~13歳でHPVワクチンを接種した女性は子宮頸がんを87%、前がん病変を97%減らすことが報告されている。

 折舘医師は、あくまでもシミュレーション上にはなると断ったうえで、「接種率が上がることで集団免疫ができる可能性が高い。男女とも8割を達成することができたら、子宮頸がんは撲滅できるのではないかといわれています」と話す。

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