子宮頸がんの原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染を防ぐ最強の手段として、世界各国で進んでいるティーンエイジャーの女性へのHPVワクチンの接種。最近では女性のHPV感染を防ぐだけでなく、中咽頭がんや肛門がんなども予防できるとして、若い男性への接種も推奨されるようになり、接種費用を補助する自治体が出てきている。
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「こんなに反響があるとは思っていませんでした」
こう話すのは、東京都渋谷区のマーガレットこどもクリニック院長の田中純子医師。今年1月から3月末にかけて同院が実施した若い男性へのHPVワクチン接種を呼びかけるキャンペーン「男の子にもHPVワクチンを!」のことだ。
キャンペーンでは、同院のグループ法人で、親子にまつわる社会課題解決に取り組む認定NPO法人フローレンス(千代田区)や、医療関係者などによる「みんパピ!」(HPVについての情報を広く発信する会)とともに、「1回分の接種を無料にする」と呼びかけた。すると、60人の募集枠が1日で定員に達し、1週間で約140人から応募があった。
申し込んだ保護者からは、「私は積極的接種勧奨が止まっていてHPVワクチンを受けられなかった。男の子も必要ということを周知すべきだ」「自身が子宮がん検診で引っかかった。ワクチンで防げるのに金銭的、心理的、時間的負担が生じるのはもったいない。親として男の子にも接種すべきと思いつつ、接種費用が高いハードルとなっている」といった声が聞かれたという。
このキャンペーンで、田中医師は「二つの気付きがあった」と話す。
一つは、コスト面でのハードルの高さだ。
HPVワクチン接種で1回あたりにかかる費用は、田中医師のクリニックでは1万6000円ぐらいだが、2万円ぐらいする医療機関もある。現在、小学6年生から高校1年生相当までの女性は、予防接種法に基づく法定接種の対象となっているため無償で受けられるが、男性は自費で打つしかない。