大阪桐蔭時代の根尾は投打でズバ抜けた能力を発揮していた
大阪桐蔭時代の根尾は投打でズバ抜けた能力を発揮していた

  地元球団で明るい未来が期待された。根尾は投打の二刀流の道を選ばず、遊撃一本でプロの世界で勝負することを公言。球団も本人の意思を尊重したが、ファームで守備のミスが目立ち、打撃も三振が多く試行錯誤が続いた。

アマチュア担当の記者は振り返る。

「根尾が野手で勝負したいという決断は決して間違っていなかった。これからの伸びしろを考えた時、投手は厳しいかなと。ただ野手でも時間はかかると思いました。遊撃で高校3年間みっちりやってきた選手ではないので、プロの世界で守備の基礎から構築する必要があった。打撃も高校時代はセンスで対応できたけど、プロの投手の直球、変化球は質が違う。1、2年目は打てなくてもいいのでじっくりフォーム固めをしなければいけなかったが、見る度に打撃フォームがコロコロ変わっていたのが気になった。首脳陣の指示なのか、本人の意思でいろいろ試しているのかわからなかったけど、明らかに伸び悩んでいましたね」

 3年目の2021年に72試合出場したが、打率.178、1本塁打、16打点と打力がネックになり、後半戦以降はファーム暮らしが大半に。22年シーズンから就任した立浪和義監督は根尾が輝くポジションを模索していた。外野手に登録変更されたが、4月下旬に遊撃への再転向を言い渡された。そして、5月に入ると投手としてもマウンドに立つ二刀流の起用法に。立浪監督と話し合い、交流戦終了後の6月下旬、投手登録に変更した。25試合登板で防御率3.41をマーク。野手と二刀流でプレーしたが、今年から投手に専念することとなった。

 他球団のスコアラーは、根尾の投手としての資質を高く評価する。

「投手をやっていないと球速が速くても手元で球が伸びない球質になるのですが、根尾のフォームはしなやかで球にキレがある。投手で実戦から遠ざかっていたとは思えない。天性の素質でしょうね。個人的にはリリーバーのほうが先発より適性があると思います。球威があるし、変化球もスライダーを磨いてもう一つウイニングショットになる球種をつくれば、十分に稼働できる。先発転向は長期的視線に立って判断したのかもしれないですが、もったいないなと感じますね。山本由伸(オリックス)や佐々木朗希(ロッテ)のようなスーパーエースならともかく、先発ローテーションで6、7勝の投手なら、1年間セットアッパーで投げて30ホールドや30セーブを挙げる投手のほうがチームにとってありがたい。根尾は器用に見えるけど、一つのことを覚えるのに時間がかかるタイプだと感じます。瞬発系の選手なので、短いイニングを全力で抑えるスタイルのほうが合うと思います」

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