お笑いコンビ「平成ノブシコブシ」の徳井健太さん(42)は、10代のころ、統合失調症の母親に代わって家事や妹の世話を日常的に行う「ヤングケアラー」でした。中学から高校にかけては「マジで青春がなかった」という徳井さん。過酷な経験といま家族の世話に追われている子どもたちへのメッセージを、時事YouTuberのたかまつななさんが聞きました。(「たかまつななチャンネル」で動画を配信しています)
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■「ドアの隙間から1万円札」閉じこもった母親と幼い妹
――徳井さんがヤングケアラーだったと聞いて驚きました。
そんな大それたものじゃないのよ。もともとヤングケアラーなんて言葉はなかったじゃん。『敗北からの芸人論』(新潮社)という本を出したときに、ある記者さんから取材を受けて「徳井さんってヤングケアラーなんじゃないですか」って言われたのが初めてだったの。「何それ」と思って。そこが問題なのかなっていう。
――ご自身では問題に気づかなかったということですね。どなたのお世話をされていたんですか?
母親ですね。俺が中学のときだから30年前か、うちは団地に住んでいて、父親は高卒で大企業で働いていたんだけど、高卒だと役職に就けないから、会社から2年間大学に行かせられていたの。(大学から)帰ってきたら課長、部長になれよってことで出張に行くことになって、その間、会社が全額給料も出すし、学費も出すと。それで父親がいなくなってから母親の様子がおかしくなってきた。
誰かが悪口を言っているとか、隣の人が文句を言っているとか。今思えば幻聴だろうね。それで母親は自分の部屋から一歩も出なくなって、心がどんどん弱っていって。
俺には6個下の妹がいて、まだ小学1年くらいだったのかな。ご飯を作る人がいないし、洗濯する人がいないし、買い物する人がいない。
たまに母親がドアの隙間から1万円と買い物リストをフッと出してくるので、じゃあこれを買ってくればいいんだなって俺が買ってきて料理して。問題なのは、普通なのよそれが。そんな大変なことって思わないでやっていたから。