AERA 2023年7月10日号より
AERA 2023年7月10日号より

■マナーを守って撮影を

 小島弁護士はこう説明する。

「賠償責任を追及するかどうか、その場合にどの程度の金額を請求するかは鉄道事業者次第なのでなんとも言い難い。ただし、カシオペアが停止したことで具体的な損害が生じたとも言い難いので、請求は難しいのではないでしょうか」

 ただ、撮り鉄とは異なるが07年、認知症で外出していた高齢男性がJR東海の線路内に立ち入り死亡した事故があった。その時、地裁判決では、旅客対応の人件費などで約720万円の請求が遺族側になされた(最高裁判決で遺族側に賠償責任はないと結論づけられた)。

こじま・よしき/翠光(すいこう)法律事務所弁護士。1971年生まれ。鉄道と広島カープのファン。法曹レールファンクラブ会員
こじま・よしき/翠光(すいこう)法律事務所弁護士。1971年生まれ。鉄道と広島カープのファン。法曹レールファンクラブ会員

 無軌道な撮り鉄たちに、JR東日本は注意を促す。

「撮影を行う際は、列車との接触事故やホームからの転落事故等が起きないよう安全な場所で撮影をしていただきたい。ホームでの他のお客様や沿線の住民の方の迷惑とならないよう、節度やマナーを守り撮影を行っていただきたいと思っております」

 小島弁護士は鉄道ファンに、呼びかける。

「最近は駅などで撮影について注意を促しているケースもあり、撮影が禁止されるようになってからでは遅い。鉄道ファンそれぞれが『あいつらは鉄道ファンじゃない』とか『ああいうのがいると迷惑だ』と他人事でとらえず、今一度自分の撮影行為を顧みて他山の石にするべきです」

 そしてこう言う。

「犯罪が成立するかどうか、賠償責任が発生するかどうかという以前に、危険な撮影をすれば、鉄道事業者や利用者に不要な負担を発生させ、撮影者は命を落としかねません」

 この声が、全ての鉄ちゃんに届いただろうか。(編集部・野村昌二)

AERA 2023年7月10日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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