近年加速する、撮り鉄の傍若無人な行為。寝台特急「カシオペア」が緊急停止する事態も起きた。鉄道好きの弁護士に、「罪と罰」を聞いた。AERA 2023年7月10日号より紹介する。
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撮り鉄のマナー違反ではどんな「罪と罰」があるのか。
最近、しばしば問題となるのが、撮影行為を制止した駅係員に対し、暴言を吐いたり暴行を加えたりするケースだ。
昨年4月、東京メトロ副都心線の明治神宮前(原宿)駅のホーム内でも「事件」は起きた。やってくる電車をホームドアから身を乗り出すように撮影しようとした撮り鉄が、「危ない」と注意した駅員に、「なに邪魔してんだお前!!」などと、逆ギレする様子がSNSで拡散した。
小島好己(よしき)弁護士によれば、暴言や暴行は、場合によっては「暴行罪」と「脅迫罪」に問われる可能性があるという。暴行罪は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料。脅迫罪は2年以下の懲役または30万円以下の罰金だ。
「さらに、公営の鉄道だと『公務執行妨害罪』によって、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金の可能性もあります」(小島弁護士)
三脚禁止の駅のホームや踏切内に、三脚を立てるケースも時々見る。小島弁護士によれば、三脚を立てたことにより鉄道の業務が妨害されれば、「威力業務妨害罪」や「往来危険罪」になり得るという。威力業務妨害罪は、既述のように3年以下の懲役または50万円以下の罰金。往来危険罪は2年以上の有期懲役と、極めて重い。
車両を撮影するため無断で他人の敷地内や建物内に立ち入った時は、「住居侵入等罪」で3年以下の懲役または10万円以下の罰金。あるいは、「軽犯罪法」違反で拘留または科料が適用される可能性がある。
ここまでは、刑事上の責任について見てきた。一方、民事上の責任は問われないのか。
電車を止めたり遅延させたりすれば、鉄道会社は運賃収入が失われたり対応のための人件費が発生するなどの損害が出る。カシオペアのケースでは、14分間にわたり列車がその場に停止した。JR東日本は、列車を止めた撮り鉄に損害賠償を請求することになるのか。JR東日本は「ノーコメント」と答えた。