学生が「生成AI」を使うことに懸念の声もあるなか、当の学生の使い方を調査してみると、適切な使い方をしている学生が多いことがわかった。「チャットGPT」の大きなポテンシャルが見えてきた。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。
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「生成AI(人工知能)は、むしろ人類をクリエイティブにさせるものだ」
6月12日、対話型のAIサービス「ChatGPT(チャットGPT)」を運営する米国オープンAIのサム・アルトマンCEOが慶応大学で学生たちと対話した。
「(学習したデータから画像や文章を作り出す)生成AIは、その利便性ゆえに人間をダメにしてしまうのでは」
こんな問いへのアルトマンCEOの答えが、冒頭の言葉だ。会場には現役の学生や大学職員ら約800人が詰めかけ、質疑応答では挙手が相次ぐなど関心の高さをうかがわせた。
利用を推奨すべきか、それとも規制が必要か──。生成AIとの向き合い方をめぐり、大学という学びの場が揺れている。
なかでもまるで人間のように質問に答える「チャットGPT」は、学生がその回答をリポート作成に使った場合の成績評価の難しさや、答えに頼ることによる思考力や創造性の低下、また無断利用による著作権の問題など課題を指摘する声も多い。
38歳の若きCEOは「教育機関が、学生に生成AIの使用を禁止するような形で抵抗するのはいい考えではない。(中略)教育そのものがそれに合わせて進化する必要がある」と話した。大学の現場では、どんな模索がなされているのだろうか。
■大きなポテンシャル
まずは学生のチャットGPTの利用状況を見てみよう。
今年5月24日から6月2日にかけて全国の学部生4千人を対象にした調査では、「チャットGPTを使ったことがある」学生は全体の32.4%、リポートなどの提出物に使ったことがある学生は14.0%だった。調査を実施した研究チームの大森不二雄・東北大学教授(高等教育論)はこう話す。
「チャットGPTについて『聞いたことはある』くらいの学生もまだ多い。ただ、徐々に増えていくのは間違いないでしょう」
自由記述欄では、「使用していて楽しい」「ChatGPTで日常が潤いました」などのほか、「使い方次第でどうにでもなると思います。きちんと基礎的なリテラシーを学んだ上で使いこなす必要があると考えます」「何より顕著になるのは、それを使っていけるのか能無しになっていくのかという人側の姿勢だと考える」といった回答もあったという。