大森不二雄(おおもり・ふじお)/1959年生まれ。文部科学省、熊本大学教授などを経て、2016年から東北大学高度教養教育・学生支援機構教授(写真:本人提供)
大森不二雄(おおもり・ふじお)/1959年生まれ。文部科学省、熊本大学教授などを経て、2016年から東北大学高度教養教育・学生支援機構教授(写真:本人提供)

 今回の調査で大森さんが驚いたのは、「チャットGPTの回答が正しいか確認し、必要に応じて修正した」「チャットGPTの回答を書き換えたり書き足したりして自分のアイデアを生かした」と答えた学生の割合がそれぞれ91.8%、85.3%と非常に高かったことだ。

「ここまでポジティブに、適切と言える使い方をしている学生が多いとは予想していませんでした。チャットGPTは大きなポテンシャルを持つツールになり得ると思います」

■文章力や思考力に効く

 大森さんの言う「大きなポテンシャル」とは何か。英語圏では、大学教育におけるチャットGPTは短期間で遠隔授業が普及したパンデミック並みのインパクトを持っていると言われる。とりわけ大きいのは「学生の文章力、思考力を伸ばし、育てるツールとしてのインパクトだ」と大森さんは強調する。

「日本のほとんどの大学では学生の文章力と、それに必要な思考力を鍛えるための授業が不十分な現実があります。その点、チャットGPTから生成される文章は、論旨が明快でバランスが取れ、非常に優れている。これは間違いなく言えることです」

 学生がそれを漫然としか読まずコピペし、リポートとして提出するのは論外だ。しかし、チャットGPTの優れた文章を読み込み、自分のアイデアや考えを書き足し、修正しながら吟味するプロセスをきちんと踏みさえすれば、「いい文章とは何か」ということがわかってくるはずだ。そう大森さんは話す。

「これからのテクノロジー社会に学生が適応するためというよりも、学生の言語能力と思考力を鍛えられるツール。その視点が最重要だと思います」

 今回の調査でも、チャットGPTを使えば自分の文章力や思考力にプラスになると認識している回答が7割を超えた。

「自分にとってプラスになる使い方を、学生たちはわかっている。それを示唆する、希望を持てる数字です。望ましいチャットGPTの使い方を、いかにして学生に普及させていくか。そこがカギになります」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2023年7月10日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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