カルロス・ゴーン日産自動車元会長が、逃亡先のレバノンで10億ドル以上の賠償を求める訴訟を起こしていたことがわかった。超高額訴訟の背景にあるゴーン氏の思惑とはなにか。
日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が、名誉を毀損されたなどとして日産の経営陣らに10億ドル(約1440億円)以上の損害賠償を求める訴訟をレバノンの裁判所に起こした。レバノンでも例を見ないという高額請求訴訟をなぜ今、起こしたのか。
ロイター通信などによると、訴えられたのは日産を含む3社と、日産のハリ・ナダ専務執行役員、豊田正和(6月27日の株主総会で退任)、永井素夫の両社外取締役のほか、ゴーン氏のスタッフだった大沼敏明氏や元監査役の今津英敏氏、川口均元専務ら12人。ゴーン氏は、虚偽の証言や証拠の捏造などから名誉を毀損されたと主張。受け取るはずだった報酬や経費として5億8800万ドル(約847億円)、精神的苦痛を受けた懲罰的請求として5億ドル(約720億円)の合計10億8800万ドルの支払いを求めている。
レバノンの政府高官の一人はこう話す。
「日産は2020年、ゴーン氏の不正行為で会社に被害が発生したとして、100億円の損害賠償を求めて横浜地裁に提訴しています。今回の提訴はそれに対する反撃です。ゴーン氏は、『自分を追い出した日産を倒産に追いやるために訴訟を起こした』と話すなど、日産の経営陣に強い恨みを持っています。10億ドルというレバノンでは聞いたことがない請求額にしたのもそのためです」
ゴーン氏が現在住むマンションについてもこう言及する。
「現在、ゴーン氏は2012年に日産が購入したベイルートの高級マンションに住み続けていますが、裁判を通じて自分の所有にしたいとも考えています。また、日本の司法制度もやり玉に挙げています。検察が起訴したら100%近くが有罪になる現状は、国際的に見てもおかしいと訴えているのです」(政府高官)