アメリカの最新調査で、幹線道路からの距離がアトピー性皮膚炎の発症リスクに影響を与えていることが示唆されました。アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因や免疫異常などが関与していることが広く知られていますが、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は「今回の調査は興味深い発見」と話します。その内容について、大塚医師が解説します。
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アレルギー疾患は身の回りにある環境要因に大きく左右されます。例えば、都市部では大気汚染が問題となっており、これが喘息(ぜんそく)を含むさまざまな病気の発症に関与していることが疑われています。そんな中、アレルギー疾患と大気汚染に関する新たな調査結果が報告されました(文献1)。アトピー性皮膚炎の発症リスクにも大気汚染が関係しているかもしれないという内容の報告です。
アトピー性皮膚炎は、遺伝的要因や免疫異常などが関与していることが広く知られていますが、今回の調査ではさらに興味深い発見がありました。なんと、幹線道路からの距離がアトピー性皮膚炎の発症リスクに影響を与えていることが示唆されたのです。
今回のアメリカの調査では、アトピー性皮膚炎の患者7384人と非患者7241人の計1万4000人超の医療記録が分析されました。その結果、幹線道路からの距離が10倍延びるごとに、アトピー性皮膚炎の発症リスクが21%低下することが明らかになりました。さらに詳しく見ていくと、幹線道路から1000m以上離れた場所に住んでいた子どもは、500m圏内に住んでいた子どもと比べて、アトピー性皮膚炎の発症リスクが27%低いことがわかりました。つまり、大気汚染がアトピー性皮膚炎の発症に影響を与える可能性があるということです。
アトピー性皮膚炎は、乾燥やかゆみ、繰り返す湿疹などの症状が特徴的で、患者にとって日常生活に大きなストレスを与える病気です。アトピー性皮膚炎の発症には、皮膚のバリアー機能の低下が重要な要素とされており、さまざまな外部要因が影響を及ぼしていると考えられています。また、皮膚のバリアー機能が正常の場合でも、なんらかの原因でアレルギー症状が誘発され、かゆみを引き起こすこともあります。