6月5日、与野党に署名提出後、取材を受ける元ジャニーズJr.の3人。左から、カウアン・オカモトさん、橋田康さん、二本樹顕理さん
6月5日、与野党に署名提出後、取材を受ける元ジャニーズJr.の3人。左から、カウアン・オカモトさん、橋田康さん、二本樹顕理さん

 現行の児童虐待防止法は、「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない」と規定している。だが、虐待の行為者は、親権を持つなどの「保護者」に限定している。この中で3人は、虐待の加害者を、教師や芸能事務所の幹部など子どもを育てる場での経済的・社会的地位を利用した「第三者」にまで拡大することなどを求めた。

 この日、被害を告白した一人、元Jr.のカウアン・オカモトさん(27)は、記者団に訴えた。

「被害者ではなく加害者が怖がる法律を作れたらいいと思っています」

 前出の郡司さんも、虐待の行為者を「第三者」にまで広げるべきだと話す。

「性的虐待は家庭だけでなく芸能界や学校、習い事、塾、放課後デイサービスなどでも起きています。しかし、その加害者を罰する法律がないため、性的虐待に遭った子どもたちは救済されません。子どもたちを救うには、被害者の権利を守る被害者視点に立った法律が必要です」

 刑事法が専門の千葉大学大学院の後藤弘子教授も、性被害を防ぐには「被害者視点に立った支援が必要」と説く。

「刑法は、社会秩序維持のために国家が刑罰を科すことを予定している行為のカタログであり、被害者の視点に立つものではありません。今回の改正で性交同意年齢は16歳になりましたが、明治時代につくられた刑法は、元々13歳と低く、子どもであっても被害者と加害者の『対等性』が強調されてきたことから、性被害者への制度的支援は長年整備されてきませんでした」

■包括的な性教育が必要

 性被害に遭っても聞いてもらえるとは思えないから、特に子どもは声を上げられない。そのため重要なのは、周囲の大人が「発見」すること。小さなことでも「おかしい」と気づいたら、「話を聞いてあげる」ことが大切。だが、今回のジャニーズ問題に見られるように、ジャニー喜多川氏の権力性によって、周りが発見できたとしても公にならない場合もある。子どもの性被害の発見と支援には、特別な仕組みが必要だという。

「韓国では性暴力被害者支援に関して国家的な仕組みがあり、また、性暴力などでDNAなどを採取した場合、証拠物を国家が保管するシステムがあります」

 さらに、「教育が必要」と話す。

「今回の刑法改正で罪名に『不同意』がついたのは大きな一歩です。しかし、『同意』とは何かという教育が全くなされていません。性被害は人権侵害であること、『イエスと言わなければ性暴力』と子どもの時から教えるなど、包括的な性教育が必要です。法の仕組みをはじめ、全ては国が教育に本気になるかどうかにかかっています」(後藤教授)

(編集部・野村昌二)

AERA 2023年7月3日号より抜粋

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