6月16日、「魂の殺人」と呼ばれる性暴力を罰する改正刑法が成立した。「強制性交罪」と「準強制性交罪」を統合し「不同意性交罪」に改称。処罰要件を明確化し、公訴時効の5年延長などが盛り込まれた。ただ、特に子どもへの性被害を防ぐには課題が残る。AERA 2023年7月3日号の記事を紹介する。
【写真】与野党に署名提出後、取材を受ける元ジャニーズJr.の3人
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今回の改正刑法では、「性的グルーミング」を処罰する規定が盛り込まれたのも特徴だ。
グルーミングとは、性的な行為を目的に子どもを手なずける行為で、その後、性被害に遭う恐れがある。
改正刑法では、16歳未満に対しわいせつ目的で面会を要求すれば、「1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金」が科せられる。
だが「生きづらい子ども親の会」代表の郡司真子さんは、「年齢制限をなくすべき」と指摘する。
「16歳以上でも、生きづらさを抱える子どもや不登校の子ども、性的知識が乏しい未熟な18歳や19歳の若者もグルーミングの標的になっています」
郡司さんによれば、グルーミングに遭いやすいのは「脆弱な子どもたち」だという。
「例えば、不登校で学校に行っていないと社会規範や人権、さらに性的同意とは何であるか、性行為をした後に何が起きるかといった性的知識を学ぶ機会もありません」
■「被害者視点」の法律を
さらに、発達障害などの発達特性を抱えていたり、いじめなど逆境環境にあったり、性暴力被害を受けている人もグルーミングに遭いやすいという。例えば発達障害の一つ、ASD(自閉スペクトラム症)は、人を疑わないことが多く性的行為に誘導されやすいといわれている。
「年齢制限をなくし、発達特性を持っていたり逆境環境にある人、性暴力被害者へのグルーミング禁止も明文化することが必要です」(郡司さん)
子どもの性被害を巡っては6月5日、ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川氏から10代のころ性被害を受けたと訴えている元ジャニーズJr.の3人が、児童虐待防止法の改正を求め約3万9千人分の署名を、与野党に提出した。