AERA 2023年6月26日号より
AERA 2023年6月26日号より

「マグニチュード(M)8ぐらいの地震は、依然として、東北地方太平洋沖で起きる可能性がある」「2011年3月11日に大きなエネルギーを出した部分の、ちょっと北側、ちょっと南側、ちょっと沖合では、地震の発生する可能性が依然として高い」

 地震本部地震調査委員会委員長の平田直・東京大学名誉教授は、国土地理院が1日に開いた報告会で、こう話した。

 地震本部は「今後も長期間にわたって東北地方太平洋沖地震の余震域や内陸を含むその周辺で規模の大きな地震が発生し、強い揺れや高い津波に見舞われる可能性があることに注意が必要である」と解説している。ここでの「長期間」はどのくらいの長さか、「規模の大きな」はマグニチュードいくつなのか、地震本部に聞いてみた。

「12年前の地震はM9.0で、地球規模で見てもかなり大きな地震で、そのあとに大きな地震が長期間起きやすい状況になっている。期間や規模について確実なことは言えない」という返答だった。ただし過去に、スマトラ沖地震(2004年、M9.1)の約7年半後に震源域周辺でM8.6の地震、約11年後にM7.8の地震が起きた事例があるとしている。

 22年には福島県沖でM7.4の地震が発生して、宮城県や福島県で震度6強を記録した。死者は4人。東北新幹線は脱線し、廃炉作業中の福島第一原発でも一時、核燃料プールの冷却が止まったり、放射性物質の入った水のタンク85基がずれたりして肝を冷やした。これを上回る規模の地震が起きても不思議ではないということだ。

 この福島県沖の地震は、太平洋から日本の下に沈みこむプレートの内部が割れるタイプの地震だった。同様の地震が起きる確率は、青森県東方沖から茨城県沖にかけて30年以内に26%以上と予測されている。

 これに加え日本海溝寄りで起きる津波地震、宮城県沖のプレート間で起きる3.11よりひとまわり小さい地震、日本海溝の東側で起きるアウターライズ地震など、さまざまなタイプの地震の確率が、いまだ高いと予測されている。

 さらに北に目を移すと、北海道から岩手県の沖合の千島海溝から日本海溝にかけては、東日本大震災とは別のタイプのM9級の地震も切迫性が高いと予測されている。前回が17世紀に発生し、300年から400年間隔と推定されているので、もう次が来てもおかしくないのだ。津波の被害は東日本大震災時を超え、最悪の場合、死者は約20万人と予測されている。(ジャーナリスト・添田孝史)

AERA 2023年6月26日号より抜粋

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