AERA 2023年6月19日号より
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 衆院選の区割り変更に伴う公認調整の問題が、自民党と公明党の関係に影を落としている。24年間続いてきた自公連立のほころびは、政界の地殻変動を引き起こす可能性を秘めている。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。

【写真】岸田文雄首相と山口那津男。自公連立は発足以来、最も深刻な危機にある。

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 自公連立は1999年、当時の小渕恵三首相と神崎武法代表が合意してスタート。参院で半数を割り込んでいた自民党としては政権維持のために切羽詰まった判断だった。小渕氏は親しかった創価学会の秋谷栄之助会長に懇請。野中広務官房長官も公明党・創価学会の幹部を熱心に口説いた。公明党が求める景気対策のための商品券(地域振興券)も大蔵省(現財務省)が抵抗する中、発行に踏み切った。

 その後も小泉純一郎政権では、公明党が小泉首相の靖国神社参拝に反対したが、連立は維持された。連立に危機が訪れたのは2009年の政権交代・民主党政権発足の時だった。自公両党は野党に転落。民主党政権からは、公明党を取り込む動きも出てきた。公明党幹部からは「自民党との連立与党は続いたが、連立野党は意味がない」といった発言も相次いだ。民主党政権が5年以上続いたら、自公の連携は解消されたかもしれない。

■パイプ役担った菅氏

 その民主党政権は混乱が続き、3年余で崩壊。自民党は安倍晋三総裁の下で政権に復帰し、公明党との連立政権も復活。自民党の幹事長には石破茂氏が就いたが、公明党・創価学会とのパイプ役は菅義偉官房長官が担った。自公の関係者によると、菅氏は創価学会で選挙などを担当していた佐藤浩副会長との連携を重視。政策決定や選挙の公認問題などでは、自民、公明両党の幹事長や政調会長同士の協議を飛び越えて菅、佐藤両氏が結論を出すケースが目立った。

 安倍政権下の15年、消費税を8%から10%に引き上げることに絡んで食料品などへの軽減税率を導入することになった。自民党と財務省は、10%の消費税を支払った後に、申告すれば2%分を還付する方式で合意。公明党も了解した。しかし、創価学会側から「痛税感がある」などと反発が出て、菅官房長官が安倍首相に助言。食料品は8%に据え置くことになった。当時、公明党の国会議員からは自分たちの頭越しで重要政策が決まったことに不満が漏れた。

 菅氏にしてみれば「創価学会の支援がなければ、自民党は選挙で勝てないという現実がある以上、政策や選挙区調整で要求を受け入れるのは当然だ」との思いがあった。自民党にとって公明党との連立は当初、国会での「数の補填」が目的だったが、徐々に「選挙での支援」の比重が強まっていった。

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