■答えのない問題が残る
おそらく問題は、それが国際的に許容されるかどうかでしょう。アメリカに支援を要請するか、中国が日本を買うか、そういう未来もあるかもしれません。
ただ、現代社会はすでに人間にとって生きやすい環境ではなくなっていると思います。日本では少子高齢化が進み人口減少が続いていますが、これは先進国に共通した特徴です。生きづらさゆえでしょう。
条件をもとにシミュレーションして結果を予測し、それに従って効率的に動くという近代化以降の考えは、軍事と経済には向いています。軍事と経済が加速した結果を、私たちはすでに見ているでしょう。あとに残るのは、答えのない、解決できない問題ばかりです。
不幸なことに、人間にもそう考える癖がついてしまった。それがそもそもおかしかったのではないか。若者の死因に占める自殺の割合の高さを見るにつけ、そう思います。
この20、30年の日本の状況を、経済では「失われた」といっていますが、確かにGDPは増えていません。実質賃金は上がっておらず、その負荷を国民が背負っている。けれども、エネルギーという視点で考えれば、この20年日本はエネルギーの増加を止めていたんです。自然を破壊してこれ以上の発展を望まなかったともいえます。それは、日本人が無意識に選択したことかもしれません。
35年後ですか? 嫌な未来を考えればきりがありませんが、僕は未来を前向きにとらえています。生きているとはどういうことか、人生とはなんだ。昔ならヒマな学生が考えていたようなことを、大真面目に大人が考えなければならない時代になる。そして、そういう日常こそが、人間を決めるのだと思います。
(構成/編集部・井上有紀子)
※AERA 2023年5月29日号