2024年から始まる新しいNISAを前に、早くも運用会社で信託報酬引き下げ合戦がスタート。S&P500一強の時代から「米国株集中投資」を懸念する層も出てきた。AERA 2023年5月22日号より紹介する。
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3月14日、低コストインデックス型投資信託「たわらノーロード」シリーズを運用するアセットマネジメントOneが、「たわらノーロード S&P500」を新しく設定することが有価証券届出書から判明した。運用開始は3月30日。運用中に日々差し引かれるコストである信託報酬は、同種の投資信託で最安の0.09372%(税込み、以下同)を打ち出した。
「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」を運用する三菱UFJ国際投信は、これに即反応。翌3月15日に信託報酬の引き下げを発表した。従来の0.0968%を、たわらS&P500と同じ0.09372%に(4月25日~)。この投資信託は、規模、人気ともに日本一を誇る鉄板の存在だ。
“戦争”はここで終わらなかった。3月24日、アセットマネジメントOneはたわらノーロードシリーズ中8本の信託報酬引き下げを発表。「全世界株式」「先進国株式」「バランス(8資産均等型)」など投資家に支持されているものばかりだ。
■常に最安値をキープ
すると3月30日、三菱UFJ国際投信はeMAXIS Slimシリーズの同種の投資信託8本の信託報酬引き下げを発表(5月11日~)。引き下げ後の水準は8本とも、たわらが発表したものと全く同じである。
信託報酬引き下げという形のわかりやすい顧客獲得戦争が、運用会社で起こっている。ニッセイ基礎研究所金融研究部の前山裕亮さんに状況を聞いた。
「当然、2024年から始まる新しいNISAを意識しているのでしょう。最近の『eMAXIS Slim一強』の牙城を崩すべく、早めにたわらが動いてきた印象。eMAXIS Slimは『常に最安値』をうたっており、これまでの実績から投資家からの信頼を獲得、ブランド化に成功しています。今回も期待通り“最安値の約束を守った”わけです」
(4月上旬、全世界株式のインデックス型投資信託に関して運用大手2社にまつわる一騒動があったが、ここでは割愛する)