もちろん、核兵器禁止条約への言及はなく、核兵器が絶対悪だという認識のかけらもない。わざわざ広島に集い資料館まで見て発表した宣言がこの中身では、およそ核軍縮なんかできっこないと宣言しているのと同じだ。これを受けて、被爆者たちが一様に憤りの声をあげたのは当然だろう。
ところが、マスコミの報道は非常に生ぬるく、徹底批判どころか、一歩前進などと評価するところまである始末。これを見た私には絶望しか感じられなかった。
ただ、一つだけ良いことがあった。5月21日のT B S「サンデーモーニング」で、N G Oピースボートの共同代表である畠山澄子氏(昨年夏頃から私も注目していたホープだ)が涙ながらに被爆者たちの憤りの声と、その被爆者たちがそれでも諦めないと言っていることを紹介し、「だから私も諦めない」と述べた場面を目にできたことだ。
大手メディアと違い、畠山氏のように権力を恐れず、勇気を持って声をあげる若者たちにこそ、未来を託したい。週刊朝日がなくなり暗い気持ちになりそうな読者に感謝の印として、「一筋の光明」をお伝えして私の最後のコラムとしたい。
※週刊朝日 2023年6月9日号