広島G7サミットが終わった。ゼレンスキー大統領の参加で世界の注目度も上がり、岸田文雄総理としては、「やった!」というところだろう。
しかし、サミットの成果は岸田氏のおかげだという人はいないだろう。
例えば、ウクライナ支援とロシアへの対抗姿勢で結束を示したと言うが、結束を示さない選択肢はG7のどの国にもなかった。ロシアのおかげで久々に結束を強めるN A T O(北大西洋条約機構)同様、G7もロシアとゼレンスキー氏のおかげでまとまることができた。岸田氏は全く無関係だ。
一方、岸田日本が足を引っ張ったのが気候温暖化対策だ。石炭火力発電の廃止時期明示に日本は徹底的に反対して潰した。電気自動車などの販売の数値目標も葬り去った。普通なら、日本が批判の矢面に立ちそうな場面だったが、ロシアと中国の手前、G7の結束の綻びを見せるわけにはいかないという事情を利用し、我儘を押し通した。恥も外聞もない振る舞いだが、ウクライナ問題にかき消されて大きな批判を浴びることはなかった。
さらに、このサミット最大の汚点となったのが核軍縮に関するいわゆる「広島ビジョン」だ。原爆資料館を首脳が訪れたことで、大きな進展があったと錯覚した人もいるが、実はこれは大きな後退だと言っても良い。皆さんには、このビジョンを日本語仮訳でも良いからぜひ読んでいただきたい。長々と書いてあるが、核軍縮を進める話に新しい話は全くなく、その大半は、自分たちの核保有の正当化と礼賛、そして、ロシア・中国・北朝鮮・イランの核保有及び核開発の批判である。
この文書から透けて見えるG7の本音を思い切りわかりやすく要約すれば、「ロシアや中国や北朝鮮の核兵器は危ない悪い核兵器だが、西側が持つ核兵器は安全を守るための良い核兵器である。核兵器のない世界という目標を達成するには、西側諸国の核兵器による抑止力を活用して西側諸国の安全をいささかも損なうことなく、慎重な上にも慎重を期して行わなければならない」というものだ。私にはそうとしか読めなかった。