来年の大河「光る君へ」を担当する脚本家の大石静さん。最近では、クドカンこと宮藤官九郎さんとの共同作を手がけるなど、古希を迎えてなお話題作を生み出し続けています。作家の林真理子さんとの対談で、大石さんはクドカンとの制作秘話を明かしました。
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林:大石さんお久しぶり! ちっとも変わらないですね。
大石:でも、夫が死んじゃって、最期の看病で疲れ果ててしまって。
林:いつお亡くなりになったんでしたっけ……。
大石:去年の暮れです。
林:おいくつだったんですか。
大石:79(歳)。最後の2、3年はだいぶ弱ってましたから、「今年いっぱいだな」って春ごろから思ってました。でも、自宅での介護も、病院の先生との緩和ケアの交渉も、精いっぱいやったので、看取った後は涙も出なかったです。眺めのいい病室に入れて、苦しまず、おびえず、穏やかに逝けるよう、やるだけやったという感じでした。
林:大石さんは、ご両親と義理のお母さんと3人看取って、3人とも大変だったんですよね。義理のお母さんのときは、寝るときに紐で手をつないで……。
大石:そう。突然夜中に動きだしたりするので、動いたらわかるように、手首を紐でつないでいたこともありましたね。でも、今度がいちばん大変でした。親は選べないけど、夫は自分で選んだ人ですから。いまの介護保険制度って、一人暮らしなら洗濯も掃除も食事もやってくれるんだけど、大人の同居人が一人でもいたら、ほとんど何もしてくれないですよ。
林:そういうものなんですか。
大石:私いま、来年のNHK大河の脚本を書いてるんですけど、ケアマネジャーさんがいい人で、「いま大石さんは大きな仕事を抱えてるから」って区にずいぶん言ってくれたんです。でも、「そういうことで考慮するのは不平等だから、それはできない」って言われた。介護保険って悪い制度じゃないけど、なかなかうまいこと回っていかないなと思いましたね。
林:よく「子育てと仕事の両立」っていうけど、私たち世代は「介護と仕事の両立」ですよね。