大石:いや、ハラハラして楽しむ余裕はなかった(笑)。宮藤さんって書くのがすっごい速いんです。「いまできました」って送ると、夜、その続きが来たりして。私はべつに遅い脚本家じゃないんだけど、送ってホッとしてると、すぐ来るんですよ。「頼むからもう少しゆっくりやってください」ってメールしたこともありました(笑)。
林:ドラマになったのを見たら、「私たちすごいな」っていう感じ?
大石:決定稿になった台本を読むと、「ここ、どっちが書いたんだかわかんないな」と思って、3人目の脚本家があらわれたという感じでした。クドウシズカだって(笑)。だけど、できあがった映像を見ると、「ここ私、ここは宮藤さん」って不思議とわかるのですよ。
林:宮藤さんってどうでした?
大石:組むの、すごくコワかったです。宮藤さんは当代一の脚本家だし、天才だと思うので、「なんだ、大石静って大したことないな」って思われたら情けないし、あんなギャグも書けないし、タッチが違うから一緒にやっていけるかな、という気持ちもありましたね。そしたら宮藤さんが「苦手なところはなすりつけ合いながら、やればいいですよ」って言ってくれて、何て男前なんだろう……って好きになりそうでした(笑)。
林:自分より若い人と組んで、そんなふうにリスペクトできるってすごいと思いますよ。
大石:宮藤さんのことを尊敬してなかったら、私、この仕事受けなかったです。私も引っ張り上げられるというか、いつもと違う私が出るかもしれないと思わなきゃやらない。「私のほうがうまいな」と思うような人とやっても意味ないじゃないですか。
林:そうですね。私は1話だけ見せていただきましたけど、主役の松坂桃李さん、本当にうまかった。
大石:松坂さん、芝居すごくうまいです。あの人、この作品で一皮むけたなという感じがする。濡れ場の多い映画もやってるんだけど、私、ぜんぜん色っぽくないなと思って見てたんですよ。だけど、今回は、断然エッチです。
林:奥さん役は仲里依紗さんです。
大石:私、彼女とは何度も一緒にやったことがあるんですけど、彼女もうまいです。磯山さんと宮藤さんも大好きなんで、「テッパンで彼女がいい!」と言ってました。
(構成/本誌・唐澤俊介、編集協力・一木俊雄)
※記事の後編はこちら>>「大河ドラマ『光る君へ』に脚本家が不安のワケ『危険な企画だと思った』」
※週刊朝日 2023年6月2日号より抜粋