四つめは、「デジタル・デトックス」の期間を設けること。やり方は人によって変わるが、あえてテクノロジーを使わない時間をつくると、普段受けている影響の大きさがわかる。科学の実験では、対照群を用いて実験群と比較し、設定した条件の作用のしかたを浮き彫りにする。人生においても、対照期間が必要かもしれない。SNSの使用を四時間ほど禁じられたら、どんな気分になるだろう? スマホが使えなければ、大切な人ともっと向き合うのではないだろうか? SNS断ちをした日は気分があまり凹まず、集中力も回復しているのではないだろうか?

 スマホやオンラインの交流は、つながりを広げてくれる。だが、自分の弱さをさらすことにもなる。一人ひとりにできることがあるとすれば、テクノロジーのもつ二面性が人生に与える影響をよく考え、良い面の作用を大きくし、悪い面の作用を小さくする努力をすることだ。

 この点で、私たちには、巨大IT企業に勝てる決定的な強みを一つもっている。「注意をめぐる戦い」は私たちの頭と心の中が戦場だという事実だ。そしてこの戦いは、「ホーム」でなら勝てる戦いだ。

●Robert J. Waldinger(ロバート・ウォルディンガー)

 ハーバード大学医学大学院・精神医学教授。マサチューセッツ総合病院を拠点とするハーバード成人発達研究の現責任者であり、ライフスパン研究財団の共同創立者でもある。ハーバード大 学で学士号取得後、ハーバード大学医学大学院で医学博士号を取得。臨床精神科医・精神分析医としても活動しつつ、ハーバード大学精神医学科心理療法プログラムの責任者を務める。禅の師でもあり、米国ニューイングランド地方はじめ世界中で瞑想を教えてもいる。 

●Marc Schulz, PhD(マーク・シュルツ)

 ハーバード成人発達研究の副責任者であり、ブリンマー大学の心理学教授でもある。同大学の データサイエンスプログラムの責任者であり、 以前は同大学の心理学科の学科長を務め、臨床発達心理学博士課程の責任者でもあった。アマースト大学で学士号取得後、カリフォルニア 大学バークレー校で臨床心理学の博士号を取得。ハーバード大学医学大学院で博士研究員として健康心理学および臨床心理学の研鑽を積んだ後、現在は臨床心理士としても活動している。

●児島修(こじま・おさむ)

 英日翻訳者。立命館大学文学部卒。主な訳書に、パーキンス『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』、ハウセル『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』(ダイヤモンド社)などがある

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