ロッテ・沢村拓一(写真提供・千葉ロッテマリーンズ)
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 プロ野球のトレード期間終了まであと1カ月半。後半戦に向けての駆け込み補強に向けて、水面下で交渉に動いている球団も少なくないはずだ。そこで今回は2020年以降に成立したトレードで成功だったもの、失敗だったものを振り勝ってみたい。また昨年オフに行われた現役ドラフトで移籍したケースは対象外とした。

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 過去3年間で最もインパクトの強かったトレードと言えばやはり2021年の中田翔日本ハム巨人)になるだろう。この年、中田は開幕から不振で、8月にはチームメイトへの暴行事件が発覚。球団からは出場停止処分を受け、栗山英樹監督(当時)も「このチームでは(復帰は)難しい」と発言し、最終的に無償トレードという形で巨人に移籍することとなったのだ。

 移籍1年目は巨人でも結果を残すことができなかったが、昨年は109試合に出場して24本塁打、68打点と復活。今年も怪我での離脱はあったものの、3割近い打率を残すなど中軸として十分な活躍を見せている。思わぬきっかけでの移籍ではあったものの、ファーストが固定できていなかった巨人にとっては大きな補強であることは間違いなく、また放出した側の日本ハムも清宮幸太郎や万波中正の抜擢に繋がったことを考えると、最終的には良い形で収まったと言えそうだ。

 投手で最大の成功事例となっているのが田口麗斗(巨人→ヤクルト)だ。巨人では3年目の2016年から2年連続で二桁勝利をマークしたものの、その後は成績を落として低迷。2021年の開幕直前に広岡大志との交換トレードでヤクルトに移籍している。移籍1年目は防御率4点台と不安定な投球も目立ったが、昨年はリリーフに固定されたことで完全に復活。今年は開幕からマクガフ(現・ダイヤモンドバックス)が抜けた後のクローザーを任され、昨年に続いてここまで防御率1点台と安定した投球を見せている。慢性的な投手不足に悩むヤクルトにとっては会心のトレードだった。

 田口を手放した側の巨人からすると、現在投手陣が苦しく、獲得した広岡も今シーズンに鈴木康平とのトレードでオリックスに移籍しているため痛恨とも言えるが、田口がそのまま残留していても現在のような役割を任せられていたとは思えず、環境と立場が選手の才能開花に寄与したと言えるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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