■検察とマスコミの同調圧力

 見過ごすことができないのは、「法令遵守と多数決」による単純化の構図は、「司法権力」である検察や「第四権力」とも言えるマスコミにも、政治権力への同調圧力を生じさせ、それが、世論形成にも少なからず影響してきた現実である。

 森友学園問題での検察の動き、加計学園問題での読売新聞、そして、安倍元首相国葬問題での、読売・産経の対応は、それが端的に表れたものと言うべきであろう。

 大阪地検の現場の動きとは関係なく、東京の検察ないし法務省側のリークとしか思えない経過で、「籠池泰典(かごいけやすのり)氏の告発受理」が大々的に報道されたのは、当時、籠池氏を国会で証人喚問したものの、安倍氏から昭恵氏を通して100万円の寄附を受領したことについての「独演会」となり、偽証の告発を行う材料もなく、打つ手に窮していた官邸・自民党側の意向を受けて検察が安倍政権に配慮した対応だった可能性が高い。そして、籠池氏が、告発事実であった「補助金適正化法違反」ではなく、詐欺罪で逮捕・起訴されたのも、従来の検察実務からは考えられないことであり、それも、「籠池封じ」を図る官邸・自民党側の意向と無関係であったとは思えない。

 このような政権ないし自民党に忖度(そんたく)しているような対応は、特捜部などの検察の現場にも少なからず影響したはずだ。

 特捜部などの政界捜査に関して、「政治的圧力で事件がつぶれた」などという話がまことしやかに語られることがある。それが、捜査に対する「露骨な介入」の形で行われることは稀だろう。しかし、政治家に関する事件には、必ず証拠上、或いは法解釈上の問題があり、消極意見の理由には事欠かない。それを乗り越えて本格捜査に結び付けるためには現場で膨大な労力をかける必要がある。

 様々なハードルを乗り越えて、本格捜査に入るかどうかという段階で、検察上層部と法務省も関わって検討が行われた結果、証拠上・法解釈上の問題が指摘され、結局、本格捜査は断念するということになると、それまでかけてきた現場の労力は無駄になる。現場の捜査指揮官にとっては、見通しが間違っていたということであり、大きな痛手となる。

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「法令に違反していない」という開き直り