このゴミが埋まっていた国有地売却に関しては、売却価格や条件が違法・不当なものではなく、「法令遵守」上問題は確認されなかった。この問題は、すべて、選挙に勝利し衆参両院で多数を占める「強大な権力者」であった安倍氏の国会答弁が招いた「単純化」によって起きた事象であった。

 加計学園問題は、規制緩和と行政の対応の問題、国家戦略特区をめぐるコンプライアンスに関する議論などの重要な論点が絡み合った複雑な問題だったが、野党・マスコミの追及は、総理大臣が「腹心の友」に有利な指示・意向を示したか、という点に集中し、問題は「単純化」された。一方の安倍首相や政府・与党側の対応は、国家戦略特区における獣医学部新設の手続きが「法令に基づき適切に行われた」と説明するだけに「単純化」された。そして、全く噛み合うことのなかった議論は、最終的には、衆議院解散総選挙で、野党側が「希望の党」騒ぎで自滅し、安倍政権側が圧勝したことで、一旦収束することになった。

 その後、いずれについても「第二幕」が始まるが、総選挙での圧勝で一層盤石となった「多数決の論理」で押し切ってしまった。

 このような森友・加計学園問題で、「複雑な問題」が「単純化」された構図とは全く異なり、桜を見る会問題は、安倍氏側の「国主催の行事の私物化」と前夜祭での「地元有権者への『ばら撒き』」そのものが、極めて単純な「不当・違法な行為」であった。

 安倍氏は、「国主催の行事の私物化」の方は、それを実行する立場の内閣府の官僚側に責任を押し付け、「法令遵守上問題がない」という従来どおりの理屈で開き直った。公選法上の違法性が否定できないはずの前夜祭問題も、明らかに虚偽とわかる答弁・説明を押し通した。そして、安倍氏が首相退任後、検察捜査で「虚偽答弁」が露呈し国会で訂正の場が設けられたが、そこでも「虚偽の説明」を繰り返した。しかし、既に元首相になっていた安倍氏への追及は極めて生温い一過性のもので終わり、安倍支持者は、第二次安倍政権下の不祥事を「モリ・カケ・サクラ」などと一括りにして軽視する姿勢をとり続け、安倍氏は自民党内での権力者の地位を保ち続けた。

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岸田首相に継承される安倍氏的手法