尖閣諸島の問題などさまざまな問題があったり、23年3月には北京で大手製薬会社の日本人男性がスパイ容疑で捕まったりといったなかで、4月には林芳正外務大臣が中国に行って、これからも仲良くやりましょうと言わざるを得ないというのはひじょうに矛盾しています。
だけど、そんなの嫌だなと多くの日本人が思いつつも、中国を怒らせると怖いかなとか、あるいは貿易の最大の相手国であれば、関係は築かざるを得ないかなとか、そういう矛盾した立場にいる日本という状態は、これからも続いていくのかもしれません。
アメリカがしっかりと、強力に残ってくれていれば、日本は話が簡単なんですけど。それがだんだんそうでなくなってきたときに、日本はつらいなと思います。あるいはフィンランドの経験から学ぶという道もあるのかもしれないなと思います。
ところでトッドさん、3番目の「子どもをつくる」っていうのは、どういうことでしょう。
トッド 日本が国として存続するためには、人口を保たなければいけません。そういった意味で、子どもをつくることと言いました。
池上 なるほど、そのことで言うと、いま、日本では少子化が本当に深刻な状態になっています。
フランスでは、少子化に歯止めをかけたという説もあれば、いやいや、十分歯止めをかけたとは言えないんだっていう説がありますね。フランスと日本の少子化対策について、どのようにご覧になっていますか。
トッド そうですね、この問題はひじょうに複雑なことですね。
いままであまり言ってこなかったことなんですけども、私が韓国とフランスを比べてみて気づいたことなのですが、韓国というのは、そのエネルギーを全て、経済の成功や経済の成長に費やしてきたわけです。そして、いまや合計特殊出生率が「0.8」と世界で一番最悪な状態にあります。
一方のフランスというのは、先進諸国のなかでも経済改革ということをなかなか進めなかった国なんです。いまも経済に関してはひじょうに問題が勃発中のフランスですけれども、経済的に非合理的なことをずっとしてきた国だったわけです。