※写真はイメージです(Getty Images)
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 いまだ終結の兆しのないウクライナ戦争。アメリカのほころびがより顕著になったが、もしアメリカが崩壊したとき、同盟関係である日本は何をすべきなのか……。池上彰氏のそんな問いに、フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏が回答した。トッド氏が提案する三つの選択肢とは。『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』(朝日新書)より一部を抜粋、再編集し、紹介する。

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エマニュエル・トッド 私のほうからも、もし、アメリカがこの時点で崩壊したら日本はどうするべきかという話を少ししてみてもいいでしょうか。

池上彰 どうぞどうぞ。

トッド まず一つ目は、日米同盟でアメリカに頼り切るのではなく、そこから抜け出し、真の「自立」を得るための手段として核武装をすること。

 二つ目は、中立国として宣言をすること。

 そして三つ目は、子どもをつくることです。

池上 ごめんなさい、3番目は何とおっしゃいました?

トッド 子どもをつくることです。

池上 なるほど(笑)。

 三つの選択肢があるということですね。核武装ということはつまり、ハリネズミのように自分のことは自分で守るということですね。

 私は、日本はやっぱり、核武装はできないなと思います。国民感情もありますし、核武装しないということが戦後の日本の国是となった以上、そこはさすがに難しいかなと思います。

 2番目の「中立」というのは、要するに中国や周辺の国に脅威を与えないということでしょうか。ただ、何をもって「中立」と言うのかは、難しいですよね。中国の横にいるから中国に逆らわないということなのかどうか。

 東西冷戦時代は、「フィンランド化」という言葉がありました。ソ連を刺激しないように、隣国のフィンランドは注意深くソ連と付き合っていくという意味なのですが、日本では極めて負のイメージで語られました。日本が、中国と戦争にならない程度に、中国を刺激しないという形で付き合っていく。現実的にそうなる可能性はあると思うのですが、そういうような形になっていくのは個人的には嫌だなと思うんですよね。

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エマニュエル・トッド

エマニュエル・トッド

エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd) 歴史家、文化人類学者、人口学者。1951年フランス生まれ。家族制度や識字率、出生率に基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言。主な著書に『グローバリズム以後』(朝日新書)、『帝国以後』『経済幻想』(藤原書店)、『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』『第三次世界大戦はもう始まっている』(文藝春秋)など。

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