私がそこで気づいたのは、出生率を高める、子どもをつくるということに関しては、経済的合理主義からいったん脱する必要があるのではないかということなんです。
考えてみれば、子どもをつくること自体が合理的な話では全くないわけです。経済的な合理主義というところからいったん脱することで、子どもというのはもしかしたら増えるのかもしれないというふうに考えたわけです。
そして、いまやとくに、たとえば高等教育を受ける人々の比率が増えてきているような国のなかではますます、「国からの支援」というものも必要になってきているはずなんですね。
そうすると、やはり経済的な合理性などというところからは一線を画したところで、少子化の政策はしていかないといけないはずですし、またグローバリゼーションといった制約からも、いったんは脱する必要があるのではないかと私は感じています。
関連してもう一つ言いたいことがあります。
日本は経済的な合理主義から脱するべきなんですけれども、ぜひ、フランスの非合理主義的な経済政策というものをモデルにしてほしいと思います。ここで実は、日仏の協力関係というのがあり得るかもしれません。
というのは、フランスは日本に対して、その非合理的な経済政策というのを見せるべきですし、一方で日本はフランスに対して技術や工業生産というのもすばらしいものだということを、もう一度フランス人に教えてあげてほしいというふうに思います。
●エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
歴史人口学者・家族人類学者。1951年、フランス生まれ。家族構成や人口動態などのデータで社会を分析し、ソ連崩壊などを予見。主な著書に『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文芸春秋)『第三次世界大戦はもう始まっている』(文春新書)など
●池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。NHKの記者やキャスターを経て、フリーに。名城大学教授、東京工業大学特命教授。主な著書に『世界史を変えたスパイたち』(日経BP)『第三次世界大戦 日本はこうなる』(SB新書)などhttps://www.amazon.co.jp/dp/4815618550