レンタル公務員 村橋友介さん(28)/熊本県庁職員。「『レンタル公務員』を広めたいですか?」とよく聞かれる。「スタイルは人それぞれ。『地域に関わる』ということに挑戦しやすい雰囲気ができればいい」(写真:本人提供)
レンタル公務員 村橋友介さん(28)/熊本県庁職員。「『レンタル公務員』を広めたいですか?」とよく聞かれる。「スタイルは人それぞれ。『地域に関わる』ということに挑戦しやすい雰囲気ができればいい」(写真:本人提供)
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 本県庁職員でありながら、休日に無償で地域の仕事をお手伝いする「レンタル公務員」でもある。キャンプ場のデッキのペンキ塗り、イベントでのカメラマンなど、さまざまな作業をしてきた。活動はどのような経緯から生まれ、どんな思いが込められているのか。AERA 2023年6月26日号の記事から。

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 熊本県庁職員の村橋友介さん(28)が阿蘇地域振興局に配属されたのは、入庁3年目の2021年だった。「地域とつながる仕事がしたい」という希望が通ってだったが、当時はコロナ禍真っ只中。イベントは全て中止で、住民と関わる機会がほとんどなく、悶々と過ごしていた。

「コロナ禍でも地域活性化のために行動している人はいる。でも、自分は何もできていない。何かしたくてもスキルがない。そんな時、雑誌の記事で、市職員の仕事の時間外に地域の草刈りやゴミ拾いなどに無償で取り組む『レンタル何でもする公務員』がいることを知ったんです」

 休日を利用しての「お手伝い」なら、自分もできる。22年1月、SNSで「レンタル公務員やります」と宣言した。ところが、周囲からは「レンタル公務員って何?」と戸惑う様子で、依頼は一向に来なかった。

「なら、皆さんがイメージできる実績を作ろうと考えました。まずは観光協会など本業でつながりのある方に、手伝いできる作業を紹介してもらいました」

 マルシェやミュージックフェス、祭りなどのスタッフ、キャンプ場のデッキのペンキ塗り、セルフウェディングパーティーで参列者に向けてのケーキカット、イベントでのカメラマン……。依頼ごとに人脈が広がり、新たな依頼へつながっていった。

 その過程で、村橋さんにも変化があった。レンタル公務員を始めた当初は、「新しいことにチャレンジし、スキルを増やしたい」という気持ちが先行していた。想像もしない依頼が来ると面白かったし、SNSにあげると「いいね!」がつくこともうれしかった。

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