■住民に光を当てる

「実績作りや承認欲求が満たされることに夢中になっていたんですね。ある時、依頼者さんに『ただ作業をこなすのではなく、効率も考えて』とアドバイスされたんです」

 その言葉で、いつの間にか目的と手段が錯綜していた自分に気が付いた。「レンタル公務員」は地域とつながる手段のひとつで、目的は依頼者のため、地域のためだ。自分の役割は、求められることの本質を理解し、裏方として地域を支え、住民一人一人に光を当てることだ。改めて、そう思った。

 村橋さんは今年7月、「レンタル公務員」のきっかけとなった「レンタル何でもする公務員」の和田真人さん(奈良県生駒市職員)をはじめ、「街・地域に飛び込み、課題を見つけて活動・解決」する各地の公務員を招いてのトークイベントを開催する。

 約1年半で、公務員だけでは知り得なかっただろう多様な人々とのつながりができた。そして、全国各地の公務員がさまざまな手段で地域と関わりを持っていることも知った。

「『レンタル公務員』を始める前の私がそうだったように、地域と関わりを持ちたいけど方法がわからない、という人がいるはず。イベントが手段を見つける機会になればいい」

 新しいプロダクトやソリューションを生む入り口は、身近なところにきっとある。(ライター・羽根田真智)

AERA 2023年6月26日号より抜粋