■時間外勤務を過少報告
市川弁護士によると、警察内部の問題はパワハラ以外にもあるという。
20年10月、長崎県警の佐世保署に勤務していた当時41歳の男性警部補が自殺した。地方公務員の公務災害の認定や補償を行う地方公務員災害補償基金県支部は、民間の労災にあたる公務災害と認定している。
男性の妻は、当時の様子をこう語る。
「20年10月3日、自宅アパートで夫が自殺しました。単身赴任だったので夫の働いている事情について、詳しく把握できていなかったんです。自殺後、パソコンやスマホを見てみると、午前0時過ぎまで頻繁に仕事をしていることがわかりました」
亡くなった男性警部補は、20年3月に交通課の係長に着任した。現場からの書類をチェックし、課長や署長らに上げることが主な仕事だった。ただ、急な逮捕があった場合などには捜査指揮を取るために時間外勤務をすることも多かったという。
「過労死しそう」「休んでいると、さらに責められる」――。男性警部補のLINE(ライン)には、そんなメッセージがあったという。
遺族は、男性警部補のLINEなどをもとに、同署での時間外勤務が月200時間前後にのぼったと推計した。過労死ラインとされる月80時間の2倍超だ。
また、手帳からは「事件や事故といった突発的対応以外は、超過勤務として認めない」と上司から指示があった旨の記載が見つかった。そのため、男性警部補は時間外勤務を過少申告していたという。
妻が振り返る。
「週に一度、片道2時間かけて、おかずを届けに行っていたんです。主人のメンタルも心配で。佐世保署に異動した最初は愚痴もこぼしたりして会話が弾んでいたけれども、最後のほうは食事が終わるとすぐに主人は横になるように。私がいて安心して寝られるならと、そっとしていました。今思えば、私のほうから話を聞き出せばよかった」