佐世保署に異動する前の大村署では人間関係も良好で、特段困ったことはなかったという。ところが佐世保署に配属されてすぐ、「課長は気質が荒く、声をよく荒らげる」などと不満を口にしていたと妻は話す。
県警は20年12月11日、上司の「能力がない」「できないなら係長をやめろ」といった発言をパワハラと認定し、上司だった交通課長を戒告処分、監督責任者である署長を本部長注意とする処分を下したと発表した。2人はいずれも同日付で依願退職した。
当時の朝日新聞の取材に対して警務課の担当者は、男性警部補の時間外勤務について「月200時間に近い数字だったと推察される」との認識を示し、長時間労働や上司のパワハラについて「自殺の要因になったのは間違いない」と述べている。
妻らは現在、男性警部補が亡くなったのは長時間労働、パワハラ、上司が注意義務を怠ったことが原因だとして、県に1億3000万円あまりの賠償を求めて提訴している。
遺族を支えてきた中川拓弁護士は取材に対し、「長崎の事件では、パワハラや長時間労働が焦点となった。警察には労働組合がなく、労働環境下の問題を組織に訴えづらいのでは」とコメントした。
男性警部補の妻は「自ら命を絶つ警察官が早くなくなることを祈ります。中身の伴った改革を進めてほしい」と語った。
(AERA dot.編集部・板垣聡旨)