この「そらりん」で飛ぶ小型機によるスカイタクシー計画も進めています。空版ウーバーですね。アプリに入力すれば、自宅に車が迎えに来て、近くの河川敷などにある発着場まで行き、搭乗する仕組みです。例えば、山梨から成田は車だと6時間かかることもありますが、空を飛べば約40分です。就航は25年の予定で、すでに1機購入し、航空会社設立認可の手続きを始めています。会社名は「Wind Ocean Airways」。僕の名前「風海」を英語にしただけです(笑)。

 一見、奇想天外に思えることも「こんなことができたらいいな」と思ったら即ググって、世界中の資料を読みあさって、実際の技術に落とし込んできました。僕の武器はスマホです。そして、机上の空論はしない。化学者の中には理論派がいますが、僕は計算する時間があるなら、手を動かして試してみた方がいいよ、と思う実験化学者です。

 研究者は論文を発表して終わりではありません。本当に世の中を変えたいのであれば、研究の成果を社会実装するところまで具体的に動かなければいけない。だから僕は自分で陸海空の運輸機関を作り、全ての乗り物を「そらりん」で動かそうとしているのです。

 未来の化学者を育てることも、僕のミッション。26年春、高校課程に相当する「CRRA未来科学技術高等幹部専修学校」を設立予定です。僕自身は、高校が嫌で嫌で。ひたすら詰め込んで受験対策をしているだけだったので、なんて無駄な3年間だろうと思っていましたから。だからCRRAは早くから夢が決まっている人を退屈させないカリキュラムを実施します。

 僕は「夢」という言葉は使いません。「未来の歴史」です。その未来に、旗を立てるのです。45年の8月18日、僕の誕生日に、人類で初めて火星に降り立ちたい。逆算して1カ月1日単位で必要な技術を洗い出しています。その計画にしたがって、未来の歴史年表上と今日の自分の差を埋めるように行動しています。だから120%実現できる。もし、イーロン・マスク氏が先に行くようであれば、もっと早く行くつもりです(笑)。

(構成/編集部・古田真梨子)

AERA 2023年5月29日号