タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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東京大学が、ジェンダー平等実現に本気で取り組み始めました。このほど女性リーダーの育成に向けた施策「UTokyo男女+協働改革#WeChange」を開始し、新任の教授・准教授の4分の1を女性にする計画を発表。これは日本のジェンダー平等を実現する上で重要な動きでしょう。財・政・官・学界で、東大卒の人々は要職に就いています。例えば現在の経団連の会長と副会長20人中、6人が東大卒。全体の3割です。集団の中で30%を占めるグループは、意思決定などに影響を与えるとされています。ちなみに同20人中、女性は1人だけ。
東大は、女性学生の少なさでも日本一です。学生総数5千人以上の大学93校の女性学生比率で、東大は19.3%で最下位。女性教員も20%未満しかいません。日本で最も権威のある大学は、日本で最も男性だらけの大学なのですね。その背景には社会の歪みがあります。女性は幼い頃から、「女の子に学歴はいらない」などの決めつけによって、男性に比べると東大を目指す動機づけや環境に恵まれないことが指摘されています。また複数の大学で医学部入試の点数操作が判明した事件のように、女性は構造的に差別され排除されてきました。事件後に公表されるようになった医学部男女別合格率では男女で大きな差はなく、女性が男性を上回った年もあります。
日本は他国よりもジェンダー平等実現の取り組みが極めて遅れています。日本の頭脳を育てる東大が男性偏重組織であることはその元凶の一つでしょう。数合わせで非主要部門に女性を増やすドーナツ型女性起用ではなく、組織の中枢に女性を。東大は、教授・准教授の半数、最低でも3割を女性にするべきです。東大が変われば日本が変わる。その矜持(きょうじ)をもって加速的に女性に門戸を開く施策を実践することを期待します。
◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。
※AERA 2023年3月20日号