■本職の選手が守るべき

 あるプロ野球OBが指摘する。

「同じ外野でも右翼、左翼は見える風景、打球の切れ方、捕球してから送球までの動き方など全く違う。複数のポジションを守れる選手は貴重ですが、大きな重圧がかかる国際試合では本職の選手が守るべきです」

 守備のほころびをいかになくすかが、頂点に立つポイントになりそうだ。

 他国を見ると、大会連覇を狙う米国が間違いなく優勝候補筆頭と言える。ただ、史上最強とは言えない。不安を抱えているのは投手陣だ。昨年、アストロズで自身3度目のサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)を受賞したジャスティン・バーランダー(メッツ、40)のほか、ディラン・シース(ホワイトソックス、27)ら旬の投手たちは軒並み参加していない。通算197勝左腕のクレイトン・カーショー(ドジャース、34)も出場辞退に。WBCに出場する際に保険に入らなければならないが過去の故障歴がネックとなり、保険会社の審査が通らなかったという。昨季12勝のネスター・コーテズ(ヤンキース、28)も右太もも痛で辞退した。

「先発の一線級で活躍している投手はなかなか代表に招集できない。野手に比べて故障のリスクが高いし、手術明け、FA(フリーエージェント)前の選手はシーズンに影響を及ぼすことを考えて、WBC参加に慎重になる。カーショーのように出場を熱望していてもかなわないケースがある。保険会社による審査のハードルも高いと言われています」(米国駐在の通信員)

 同じく優勝候補のドミニカ共和国も予備登録50人のうち18人に所属球団の参加許可が出ていないと報じられ、ルイス・カスティーヨ(マリナーズ、30)ら大リーグで活躍する先発陣4人の出場辞退も伝えられた。1次リーグでベネズエラ、ニカラグア、イスラエル、プエルトリコと対戦予定で、敗退の可能性がゼロとは言えない。

 だが、「死の組」を勝ち抜けば、その勢いで頂点に立つ力を持っている。準決勝、決勝は昨季ナ・リーグでサイ・ヤング賞を受賞したサンディ・アルカンタラ(マーリンズ、27)、昨季11勝とブレークしたクリスチャン・ハビエル(アストロズ、25)の両投手が先発する可能性が高い。

 打線は21年に大谷との熾烈(しれつ)な本塁打王争いを制したウラジーミル・ゲレロ(ブルージェイズ、23)は出場を辞退したものの強打者たちが勢ぞろい。破壊力は「米国よりも上」の声が上がる。

■準決勝で米国と激突か

 侍ジャパンは順当に勝ち上がれば、準決勝で米国と激突する。この強敵を倒しても決勝はドミニカ共和国と対戦する可能性が高い。栗山英樹監督は一昨年12月の就任会見で、WBCに向けてこのように語っている。

「金メダルを取ったオリンピックの感動、日本の野球はすごいなとみんなが感じたと思います。うれしかったし、僕らも感動した。大リーガーたちが出てくる戦いのなかで、米国を含めたチームを打ち破って頂点に上り詰めることを野球ファンはみんな待っていると思います。それが現実になるようにしたい。なんとか勝ちきって選手の思いや選手たちのすばらしさ、日本野球のすごさを伝えられるように全力を尽くしていきます」

(ライター・今川秀悟)

AERA 2023年3月13日号より抜粋

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