「ジュリアードの大学院の入学試験は、一次審査として演奏のオーディションビデオとエッセイを送り、それをパスするとニューヨークにある本校で本試験となるオーディションに呼ばれます。GPA(大学時代の成績)も提出しますが、合否にどこまで関係があるのかわかりません。入学できるかどうかの大部分は、実力、つまりオーディション当日の演奏にかかっているように思います。
二次審査ではソリストとしても活躍されている教授たちがずらりと並ぶ前でオーディションを受けます。課題曲は6曲ほど。ランダムな順番で演奏曲を指定されるのですが、私のときは最初に弾く曲だけ自分で選ぶことができました。私が選んだ曲はチャイコフスキーのコンチェルト。子どものころから弾いている大好きな曲で、寝ていても弾けそうなくらい何度も練習してきたもの。プレッシャーがありましたが、この曲がうまく弾けたことで気持ちの余裕ができたように思います。
課題曲は全部弾くと1時間半ほどありますが、試験で弾くのはほんの一部分。教授の指示通りに、『じゃあ2曲目の80小節目から弾いて。はいOK』『次は3曲目の中間部から。今日はもういいよ』みたいな感じです。寝る間も惜しんで練習して、ニューヨークまで足を運んで、弾かせてもらえるのはたった15分ほど。本当にあっという間です。『もう終わり!? もっとちゃんと聴いて!』と言いたくなったのは私だけじゃないと思います(笑)。まったく予想していなかった小節を弾くように言われたときは一瞬焦りましたが、最初の曲がしっかり弾けたこともあって、落ち着いて自分のペースに持ち込むことができました。合否の通知は後日メールで知らされるのですが、URLのリンクを開くと動画が再生されて、“Congratulations!”と表示されました」
■相変わらず忙しい学生生活
2016年9月からジュリアード音楽院に進学した廣津留さん。そこでの日々はこれまでにないほど音楽漬けだったという。