50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、2019年の小脳梗塞に続き、今度はうっ血性心不全の大病を乗り越えてカムバックした天龍源一郎さん。人生の節目の70歳を超えたいま、天龍さんが伝えたいことは? 今回は「外国人レスラー」をテーマに、つれづれに明るく飄々と語ってもらいました。
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外国人レスラーについてよく聞かれるのが“誰が一番強かったか”だけど、これは答えるのが難しいんだよ。俺からするとピントがズレている質問だね。全日本プロレスを例にとると、外国人レスラーはジャイアント馬場さんに呼ばれて参戦しているわけだ。馬場さんからオファーがあって、ギャラをもらっているから、試合で馬場さんのことをコテンパンにできるかというと、それはできない。
逆に俺と戦うときは、いくらでもボコボコにしていい。攻撃のシビアさが全然違うんだ。スタン・ハンセンもブルーザー・ブロディもみんなそうだったよ。外国人レスラーはみんな賢くてマネーファーストだからね。次に呼んでもらえたら1万ドルがもらえるのに、ボスである馬場さんをボコボコにする馬鹿はいないだろう。どうしても相手や状況によって戦い方やスタイルが変わるものだから、誰が強いとは言明できないんだ。
強さを比較するのは難しいが人間性についてはいくらでも挙げられる(笑)。俺が見てきた中で気難しい、やっかいなレスラーの二大巨頭はブロディとミル・マスカラスだ。マスカラスはホテルのランクが低かったり、部屋が狭かったりするとすぐに会社(全日本プロレス)に文句を言っていた。サイン会も思ったより人が多いと「このギャラでは割に合わない」と応じなかったり。
ビジネスライクと言えばそれまでだけど、プロ意識がなせることだろう、細かいことにも徹底していたよ。それは日本だけではなくアメリカでも同様だ。ニューヨークでは大きいレスラーが人気でメインの試合も大きいレスラーが務めるが、マスカラスは小さいからだでも「メインじゃないと出ない」と譲らなかった。大きい選手を押しのけて、自分のポリシーを守っていたね。