旅行者が訪日前に利用するつもりだった通信手段は、「無料公衆無線LAN」が70.5%、次いで「SIMカードの購入」28.6%、「ローミング」24.0%だった(無線LANの規格の一つがWi-Fi)。圧倒的に多くの外国人旅行者が無料公衆無線LANを使うつもりだったことがわかる。
実際に訪日して「旅行中に困ったこと」のトップも「無料公衆無線LAN環境」で、回答者の46.6%が不便を感じていた。
無料公衆無線LANの利用は、空港やホテルでの満足度が比較的高かった一方、鉄道(駅構内)については半数を上回る53.0%が「不満足」と回答した。
観光庁はこの調査結果などをもとに、訪日外国人旅行者向け無料Wi-Fi環境の整備に努めてきた。
14年12月、東京都交通局と東京メトロは相互に手軽に利用できる無料Wi-Fiサービス「Toei_Subway_Free_Wi-Fi」「Metro_Free_Wi-Fi」を開始。東武鉄道も翌年5月からWi-Fiサービスを始めた。
しかし、だ。
20年春以降、新型コロナの影響で訪日外国人旅行者は激減。その影響もあってか、最近は公共無料Wi-Fiを整備する動きは徐々に後退し始めているようにも感じられる。
観光庁「これからも整備」
公共交通機関からWi-Fiが相次いで撤去されたことについて観光庁はどう見ているのか?
外客受入参事官室の丹羽岳志課長補佐に尋ねると、「Wi-Fi全般の整備については電波を所管している総務省との関係もございます。交通事業者のビジネス判断については各社の判断があると思います」と前置きしたうえで、次のように語った。
「私どもは現在も訪日外国人の受け入れの環境を整える取り組みを行っております。各種支援策もオリンピックの終了に関係なく継続しております。新型コロナの影響は不透明ではありますが、今後は訪日外国人旅行者の増加が見込まれます。ですから、Wi-Fiを社会インフラとして整える機運が下がっているのではないか、という質問に対しては、そのようなことはまずない、というのが私どもの認識です」(丹羽さん)